大晦日から降りだした雪は正月三が日も続き、4日の初出勤日は交通も大混乱であった。いつもより早めに家を出たものの、至る所で車が立ち往生している。ようやく会社にたどり着いたものの、駐車場の入り口は除雪車が片付けた雪の山である。持ちなれないスコップを手に除雪作業を始めたが遅々として進まない。疲労がピークに達するころ、ようやく2人、3人と出勤した職員も手伝ってくれ、何とか駐車スペースが確保できたのは1時間後のことである。こんなことは春までに数回あると聞かされ、あらためて雪国の厳しさを知った。
大雪に加え、学校がまだ冬休み中のせいか、年初の顔合わせの日であるにもかかわらず欠席者が6名もおり、次郎も機嫌が悪い。以前は初出勤の日は全員で乾杯した後、近くの神社に参拝していたらしい。だが、今はそんな悠長なこともしていられない。次郎は、正月気分の抜け切らない職員の重い腰を上げさせるのに懸命であった。設計書を打たせたり、あいさつ訪問に行くように指示したり、たまっている報告書の処理などで慌ただしく一日が終わった。
翌5日は午後から機関長・組織長の合同会議や新年会が予定されており、今月も相変わらずスケジュールがぎっしり詰まっている。だが先月の不祥事の影響か、次郎の言動は何となく精彩がない。これではいけないと思いながらも、次郎を非難がましい目で見つめるNさんの顔や、購読を強要する二人連れの恐ろしげな姿が脳裏に浮かんでくる。もともと次郎は自分の性格を物事にあまり動じず、楽天的な方だと思っていたが、意外に繊細で傷つきやすいのだろうか? そんな自分がまた情けなく、もがき苦しむ心境の次郎であった。
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