今のY機関は、今年度入社した大塚さん、永井さんを中心に育成層が10名を占め、彼女たちの若々しいエネルギーに満ちている。だが、いくら意欲があっても、それだけでは営業はうまくいかない。まして「100年に一度の金融危機」、解約・失効の減少契約はとどまることを知らない。機関長としてはつい、感情的になってやみくもに減少契約を抑えようと、職員に無茶を強要することにもなる。
もし、タイトル獲得のために、解約を一切受け付けなかったり、引き延ばしをしたら、顧客との間に立った担当者は苦境に陥る。継続率に影響するからといって失効を許さなかったら、結局扱者が立替えすることにもなろう。手段を選ばず、部下の犠牲のおかげでタイトルを獲ったとしてもむなしく、逆に信頼を失墜させ反動を受けることになる。一度、顧客から解約の申し出があれば、それを翻意させるのは並大抵のことではない。やはり、日ごろからの密着、人間関係づくりが基本で、そのためのノウハウを徹底して教えていた。
また、いくら減少契約を抑えても、セールスマンの増収にはならず、新規契約の増産が必要であることは言うまでもない。育成層が多いだけに、契約がうまくいかなければ彼女たちの意欲も喪失し退社に結びつきかねない。育成層が多いことはまさに両刃の剣であり、大きい効果や良い結果をもたらす可能性もある反面、多大な危険性をもはらんでいる。だからこそ、自分の入院体験からも、医療保障や生活保障の必要性を訴え、顧客のニーズを把握した提案をするよう、一人ひとりの設計書に目を通し、具体的な話法などをアドバイスした。さらに、訪問結果をフォローし必要によっては同行指導を繰り返した。
こうした次郎の姿勢や努力が徐々に実を結び、成果も出始めたのと前後して、若手を中心に夕方から自主的な勉強会が行われるようになった。テーマは「生前給付金」「手術特約」「公的年金」など毎回決められ、どう販売に結びつけるか、実体験を基に熱心な討議が行われた。個性が皆違うように、同じ保険の販売でも切り口に特徴や得意技があり、そうした成功や失敗体験はお互いに大いに参考になり刺激ともなったのである。
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