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FPのひとりごとE
「P/L(収支計算書)のつくり方」
「P/L(収支計算書)のつくり方」
前回紹介したB/S(バランスシート)は、「財産と借金の記録」で、作成したときの「正味財産(財産−借金)」を知ることができるもの。一方、今回取り上げるP/L(収支計算書)は、1月から12月の「一年間の収入と支出の記録」で、収入の範囲内で生活できているか、何にお金を使っているかなどをチェックすることができる。
多くの家庭ではボーナスなどの臨時収入があり、また支出についても年払いや年に数回の支払いのものもあるので、毎月の家計簿のほかに年単位で収支計算書を作成することで、家計の全体像がわかるようになる。
下に家計の収支計算書の一例をあげている。これを参考に収支計算書を作成してみよう。最近は、銀行口座からの自動振替や、カード払い、給与天引きによる支払いが多いので、たとえ家計簿をつけていなくても大丈夫。
例えば、基本生活費とその他出費の一部以外は、通帳やカード払いの明細書、給与明細があれば記入できるはずだ。現金で払った分についても、必ず銀行口座からお金を引出しているはずなので、その金額を書けばいいだけ。少し面倒だが、難しい作業ではないので試してみてほしい。なお、毎月発生する支払いは、一年分を合計してから12で割って1カ月の平均額を記入する。
支出項目は、それぞれの家庭のお金の使い方によって、細かく分けても大ざっぱに分けても構わないが、節約したい項目や必ず発生する項目は独立させて管理したほうがいいだろう。
<家計の収支計算書の例>
項目 |
毎月(A) |
年1〜2回(B) (臨時・一時支出) |
合計 (A×12+B) |
給与1 |
450,000 |
2,000,000 |
7,400,000 |
給与2 |
150,000 |
0 |
1,800,000 |
その他収入 |
0 |
0 |
0 |
収入計 |
600,000 |
2,000,000 |
9,200,000 |
基本生活費
(食費・雑費など)
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85,000 |
150,000 |
1,170,000 |
水光熱費 |
30,000 |
0 |
360,000 |
通信費 |
35,000 |
0 |
420,000 |
住宅費 |
150,000 |
860,000 |
2,660,000 |
教育費1 |
35,000 |
0 |
420,000 |
教育費2 |
40,000 |
0 |
480,000 |
保険料 |
25,000 |
80,000 |
380,000 |
自動車費 |
20,000 |
200,000 |
440,000 |
こづかい(2人分) |
100,000 |
0 |
1,200,000 |
その他支出 |
10,000 |
300,000 |
420,000 |
支出計 |
530,000 |
1,590,000 |
7,950,000 |
収支差額 |
70,000 |
410,000 |
1,250,000 |
(貯蓄) |
(60,000) |
(300,000) |
(1,020,000) |
収支計算書に記入するときの注意点は、以下のとおり。
(1) | 「収入」は手取り額。税金や社会保険料を除く。天引きされている生命保険料や各種積立額などは加える。生命保険料や積立額(貯蓄)は、支出項目にも同額を
書いておく。
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(2) | 「その他収入」は、お祝い金や、保険の満期金などの臨時収入や副収入
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(3) | 「住宅費」は、持ち家なら「住宅ローン+管理費など+固定資産税+火災保険料」、
賃貸なら「家賃+更新料などの1年分+火災保険料」
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(4) | 「教育費」は、学校教育費と塾代、習い事費など
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(5) | 「自動車費」は、ガソリン代、駐車場代、税金、車検費用、保険料、自動車ローン
返済額など
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(6) | 収支差額の分だけ貯蓄が増えていなければ、不明分を「その他支出」に入れる。
事例では、125万円と102万円の差額23万円が使途不明金(その他支出)。金額が
多いので、何に使っているか確認が必要。
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収支計算書の結果は、前回取り上げたバランスシートにも影響する。
一年間の収支が黒字(プラス)で貯蓄(金融資産)が増えれば、財産(A)が増える。あるいは黒字分を繰上返済すれば、ローン(B)が減る。いずれの場合も正味財産(C) が増えることになる。
逆に収支が赤字(マイナス)の場合、貯蓄(金融資産)を取り崩すか、ローンを借りることになるので、正味財産(C)が減ってしまう。
日々のお金の出入りだけに目を奪われていると、知らず知らずのうちに財産を減らしたり、借金を増やしたりすることもある。ローン破綻に陥るときには、目の前のお金の流れだけに気持ちが集中してしまい、将来どうなるかに考えが及ばなくなっていることが多い。毎日の節約ややりくりも大事だが、家計収支を長いスパンで見ることや、自分の正味財産を常に意識しておくことは、これからの家計管理には欠かせないだろう。
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2009.05.11
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執筆者:山田 静江 (やまだ しずえ)
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[経歴・バックグラウンド]
ファイナンシャル・プランナー/CFP(R)
早稲田大学商学部卒業後、東海銀行(現:三菱東京UFJ銀行)に勤務。 その後、会計事務所やFP事務所勤務を経て、2001年にファイナンシャル・プランナーとして独立。
現在は、ライフプラン・リタイアメントプラン、家計管理、年金・社会保険、生命保険などに関する執筆や監修、セミナー講師、個人相談を行っている。
最近の監修本に「家計一年生」(主婦の友社)、「実家のお墓、自分のお墓 これから『お墓』どうしよう !?」(オレンジページ社) がある。
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