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FPのひとりごと
 
FPのひとりごとM
「マネープランの意義」
 
「マネープランの意義」
  年初に「あなたの夢、初めて聞いたわ…」という妻の言葉で始まる某生命保険会社のCMが放映されていた。 このCMを見ていて、FP(ファイナンシャル・プランナー)のIさんから聞いた話を思い出した。
  50歳のH子さんから保険見直しの相談を受けたIさんは、見直しにあたって、H子さんの家計について尋ねたところ、年収の大半を占める額の住宅ローンを払っていることが判明した。ローン残高はそれほどでもないのにどうして? と不思議に思ったIさんが、さらに調べたところ、何と7%台の高利率での借り入れだったそうだ。H子さんも借り換えを検討したことがあったが、名義などの事情があって金融機関から断られたという。
  「それは大変ですね」で話を終わらせなかったのが、Iさんのいいところ。住宅ローン返済のために、H子さんの娘さんであるJ子さんが風俗関係の仕事をしていることがわかり、J子さんからも話しを聞くと、生活していくためには仕方ないが、本音は風俗を辞めて、いつかは結婚もしたいという。そこでIさんは金融機関など各所を奔走し、名義変更や借り換えの手続きの手伝いをした。その結果、住宅ローン返済額は年間100万円近く減り、J子さんは職を変えることができた。
  お金に困っている実情を知っていたので、保険見直し以外の手数料はもらわなかったが、数年たった今もお中元とお歳暮は欠かさずに贈ってくれる。また、何年かたってからJ子さんに「Iさんは私の人生を変えてくれた人。とても感謝しています」と言われたこともある。この仕事をしていて良かったと、心の底からうれしく思ったそうだ。
  小さな保険相談から始まったかかわりが、H子さんとJ子さんの人生を変え、夢を切り開くお手伝いをする結果になったという、ドラマやCMの題材になりそうなちょっといい話。でも日本ではまだ、お金のことを話したり考えたりすることはいいことではない、という風潮が残っているのか、「FPはお金の話ばかりする」と言われてがっかりすることがある。
  もちろんお金があれば解決することばかりではない。しかし、お金がなければ解決しないことは山ほどあり、お金の問題は人生や人間関係を狂わせる。今の日本ではちょっとした判断ミスで家計危機に陥ることも少なくないのだ。マネープランとそのためのアドバイスは、誰かをお金持ちにするためではなく、お金で困る人を減らすために、必要なことだと思う。
  生命保険販売の仕事は、マネープランを通じて他人の人生にかかわるという点でFPの仕事と共通点は多い。皆さんも多かれ少なかれ、前述のようなドラマを経験していると思うが、こういうふうに自分の仕事が誰かの役に立ったと感じることができる職業は、それほど多くはないだろう。仕事だから売上や収入は確保しなければならないが、それ以外の部分も大切にして、誇りを持って仕事を続けていただきたいと願っている。
2010.01.25
執筆者:山田 静江
(やまだ しずえ)
[経歴・バックグラウンド]
ファイナンシャル・プランナー/CFP(R)
早稲田大学商学部卒業後、東海銀行(現:三菱東京UFJ銀行)に勤務。
その後、会計事務所やFP事務所勤務を経て、2001年にファイナンシャル・プランナーとして独立。
現在は、ライフプラン・リタイアメントプラン、家計管理、年金・社会保険、生命保険などに関する執筆や監修、セミナー講師、個人相談を行っている。
最近の監修本に「家計一年生」(主婦の友社)、「実家のお墓、自分のお墓 これから『お墓』どうしよう !?」(オレンジページ社) がある。
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