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働く女性の実情
〜労働力人口は増えても変わらない女性の就業率〜
  厚生労働省は3月28日、「平成16年版働く女性の実情」(女性労働白書)を発表した。この白書は、さまざまな角度から女性の就業状況を整理し、地域間や諸外国との比較により就業継続の条件などを分析している。その結果として、女性の就業意欲を顕在化させるためには、「時間面で柔軟な就業機会の提供」「職場での公平・公正な処遇」「子を産み育てながら就業を可能とする社会的サポート」が求められている。
●  女性の労働力人口は、3年ぶりに増加
  女性の労働力人口は2,737万人で3年ぶりに増加(男性は3,905 万人の減少)したが、労働力率(15歳以上人口に占める労働力人口の割合)は前年に引き続き48.3%と変わらなかった。
  女性の雇用者数は昨年に引き続き増加(26万人増)し、雇用者総数に占める女性の割合は41.1%(前年40.8%)と、さらに上昇している。
●  日本の労働力率は、欧米諸国よりも低い
  日本の女性の労働力率はバブル崩壊以降停滞し、その水準はイタリアよりは高いものの、そのほかの欧米諸国よりも低い。また日本および韓国の年齢階級別労働力率は「M字型」になっている。
  これは、女性労働者の年齢階層別の労働力率をグラフに表すと、30歳代前半をボトムとするM字カーブを描くことから、女性労働者の働き方のことを「M字型」と呼んでいる。日本のこの現象は、結婚・出産・育児の期間は仕事を辞めて家事・育児に専念し、子育てが終了した時点で再就職するという女性のライフスタイルの現れであるが、かつてM字型であったイギリスなどの欧米諸国では、すでにM字型から脱却している国もあり、今後、日本が国をあげて参考にしていきたいところでもある。
●  日本は諸外国に比べ、高学歴の女性の労働力率が低い
  日本では高学歴の女性の労働力率が低いという特徴がある。女性の大卒などの労働力率は、ほかの学歴に比べ40歳以上で低くなっている。また配偶者の有無別にみると、配偶者ありの大卒などの有業率は、ほかの学歴に比べ低くなっている。
●  地域別の女性の就業状況
  就業希望実現者は、政令指定都市および特別区を抱える都道府県は日本の女性人口の58%、政令指定都市および特別区だけで23%を占めている。しかし都市部を抱える都道府県での女性の就業意欲は高いが、就業希望実現者割合は低い傾向にある。政令指定都市および特別区では特別区、名古屋市、広島市の順に高いが、特別区を除き、いずれも全国平均を下回っている。政令指定都市および特別区を抱える都道府県も、就業希望実現者割合が全国で最も高い福井県並み(84.0%)になれば、これらの都道府県で187万人、政令指定都市などで75万人の労働力が確保できることになる。
●  女性の就業意欲を顕在化する
  女性の就業意欲の顕在化のためには、育児期における勤務時間の柔軟化や、短縮できる就業機会を設けて継続しやすくするなどの「労働時間面の配慮を含めた両立支援策」および「男女均等な待遇と公正な評価の促進」が同時に進められることが大事である。
  また育児や介護のために退職し、再就職を希望する者に対して、早期の再就職を促すような支援が行われることなども求められており、今回の育児・介護休業法の法改正が追い風になってくれることを望んでいる。
参考:厚生労働省ホームページ「平成16年版働く女性の実情」
(庄司 英尚、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2005.04.04
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