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中小企業からみた新会社法制のポイント
  2006年から最低資本金制度を撤廃、また有限会社制度も廃止され株式会社に統合される可能性が強くなった。会社経営に関する規制緩和の集大成ともいわれる会社法案は、去る3月22日、今国会に提出された。会社法案要綱はA4判104ページ、法律案は857ページ、「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」は3642ページにのぼる膨大なものとなっている。ここでは、中小企業からみた新会社法制のポイントを紹介したい。
●  既存の有限会社は経過措置で存続
  会社法案では、有限会社法制と株式会社法制とを新しい「株式会社」法制に統合し、有限会社制度を廃止することが注目点の一つとなっている。そこで、既存の有限会社は会社法施行後、(1)会社法の規定による株式会社として存続する、(2)既存の有限会社の定款、社員、持ち分および出資一口を、存続する株式会社の定款、株主、株式および一株とみなすなどと定められた。
  ただし「商号に関する特則」において、会社法の例外として、既存の有限会社は、通常の株式会社と区別するため、商号中に有限会社という文字を用いなければならない「特例有限会社」として存続することとされる。
  一方、特例有限会社から通常の株式会社に移行したい場合は、商号中に株式会社の文字を用いる定款変更をする株主総会の決議が必要になる。株主総会決議後、本店所在地においては2週間以内、その支店所在地においては3週間以内に、特例有限会社の解散の登記をして、商号変更後の株式会社の設立の登記をすればいいと定められている。
●  最低資本金規制は撤廃
  最低資本金制度は見直し、会社設立に必要な出資額の下限額(現行:株式1,000万円、有限300万円)の制限は撤廃する。最低資本金規制は、幽霊会社や休眠会社の乱立防止や債権者保護の観点から1990年に厳格化されたものだ。しかし近年の廃業率が開業率を上回るなかで創業の円滑化の必要性が社会的な要請となっていることや、少額資産で営業可能なネットビジネスなどの業種が増えてきており、最低資本金規制が創業の障害となるとの懸念が強まっていた。
  そこで、2002年に新事業創出促進法による最低資本金特例が導入され、経済産業大臣の確認を受けた場合、創業5年間は最低資本金規制の適用を猶予している。いわゆる“1円起業”が可能となっており、同制度の利用は1月21日付けで2万社を突破(2万211社)し、このうち資本金1円で設立された会社が927社にのぼる。
  今回の新会社法では、さらに一歩進んで、最低資本金規制そのものが撤廃される。上記の“1円起業”が恒久化されるわけだが、法人格濫用への懸念に対しては、裁判所による解散命令や法人格否認の法理が適用される。また一定金以上(300万円程度)の資本(純資産)を積まなければ、配当などの剰余金分配ができないこととなっている。資本流出を防止する機能を維持することで、実質的な資本充実を担保することが目的だ。
●  機関設計の柔軟化
  これまで株式会社は、公開・大企業を想定したことから、機関設計においても一律に厳格な規制があった。取締役会・監査役の設置を義務付け、取締役の数は3人以上、取締役は2年、監査役は4年との任期が決められていた。一方、中小企業・非公開会社を想定した有限会社では、取締役会・監査役の設置は任意であり、取締役も1人ですみ、取締役・監査役の任期に制限はない。ところが、信用力などの点で株式会社を選択した中小企業が多いことから、名目的な取締役や監査役が設置される株式会社が多数存在するという実態をまねいてしまった。
  そこで、特に譲渡制限株式会社については、最低限の機関設計のみを定め、企業の成長段階に合わせた柔軟な機関設計を選択することを認める。具体的には、(1)取締役3人以上で構成するという取締役会の設置規制を外し、取締役1名でもよいこととする、(2)取締役・監査役の任期は、定款で定めれば最大10年までの任期とすることができる、という見直しが行われる。
  そのほか、(1)類似商号規制の撤廃、(2)発起設立の場合の払込金保管証明制度の廃止、(3)剰余金の分配について、いつでも、株主総会の決議で決定可能、(4)税理士などが取締役と共同で計算書類の作成に携わる会計参与制度を創設、などが盛り込まれている。
  なお会社法の施行は、「公布の日から1年6カ月を超えない範囲内で、政令で定める日」と定められているが、一部を除いて2006年4月1日からの施行が予定されている。
参考:法務省HP「会社法案要綱」
会社法案の法律案要綱
会社法の法律案
会社法の整備法案
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2005.04.04
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