>  今週のトピックス >  No.1014
日本企業 敵対的買収に備え
●  ライブドア騒動が引き金に
  日本企業が敵対的買収に備えて防衛策を打ち出している。ライブドアがニッポン放送の株式を買い集め、買収しようとしていることが引き金となった。また会社法改正により、株式交換方式で外国企業が日本企業を買収できる方向で議論が進んでいることも背景にある。しかし過度の防衛策は、経営陣の保身や株式市場の停滞につながるため、企業側も手探りが続いているのが現状である。
  日本で『敵対的買収』という言葉が一躍有名になったのは2003年末のこと。米国系の投資会社が、東京証券取引所に上場する切削油メーカーのユシロ化学工業と、染色加工大手のソトーに敵対的な株式公開買い付け(TOB)をしたのがきっかけだ。
  TOBとは、取得したい株式数や価格などをあらかじめ公表した上で、株式市場の外で不特定多数の投資家から株式を買い集める手法。相手先企業に事前の同意を取り付ける場合と取り付けない敵対的ケースがある。
  両社は大幅な増配で、株価を買い付け価格より引き上げ、既存の株主にTOBに応じる利点をなくさせることで、この敵対的TOBを回避した。
●  防衛策「ポイズンピル」
  証券取引法では市場外の取り引きで3分の1超の株式を取得しようとする場合、TOBを義務付けている。ライブドアのケースは、通常ならばニッポン放送を対象に、フジテレビとライブドアによるTOB合戦となるところだった。そうならなかったのは、ライブドアが東証の立会外取引システム「ToSTNeT(トストネット)」による取り引きで株式を取得したからだ。実質的には、市場外での相対取り引きと同様の効果が期待できる売買システムだが、東証は「市場内取引」と位置付けており、ライブドアはこの制度のすきをついて、いきなりニッポン放送の大株主に躍り出た。この「奇襲」を、「確かに合法的だがマナー違反」と指摘する専門家が多い。
  いずれにせよ、こうした手法を用いて企業を敵対的に買収しようとすることは可能だ。そこで、日本企業の間には突然の買収に備えようと、対策を講じるところが出てきた。その代表例が産業用制御機器メーカーのニレコが3月中旬に発表した防衛策だ。敵対的買収者が株式を20%以上買い占めた場合、新株2株を1円で買える「新株予約権」を3月末の全株主に、保有株数分だけ無償で交付するというものだった。
  敵対的買収者が20%の株を買い集めた時点で、ニレコがこの予約権を行使して株式数を3倍にした場合、買収者の保有比率は6%強に下がり、買収するにはさらなる買い増しが必要になる。この防衛策は、企業に手を出した瞬間、仕掛けていた「毒薬」が効いて買収者の株買占めを無効化することから『ポイズンピル(毒薬条項)』と呼ばれている。
●  株価と株式時価総額を引き上げることが最良の防衛策
  防衛策はポイズンピル以外にもある。敵対的な買収を仕掛けられた会社の経営陣が友好的な会社や投資家を連れてくる『ホワイトナイト(白馬の騎士)』。企業の持つ重要な有価証券や知的財産権、事業権などの資産を第三者に売却し、買収の魅力を減らしてしまう『焦土作戦』。買収しようとしてきた企業に対し、逆に買収を仕掛ける『パックマンディフェンス』などが有名だ。だが、最も有効な手段は、業績を上げることで企業の魅力を高め、株価と株式時価総額(ここでは買収価格)を引き上げることである。
2005.04.11
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