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増える国民負担にFPが果たす役割とは
  FPにとって最大の課題は、少子・高齢化に対応した個人のライフプランニング、ファイナンシャルプランニングの設計である。つまり、少子・高齢化に伴う税金・社会保険料負担、いわゆる国民負担率の増加による可処分所得割合が減少し、同時に年金・医療・介護の社会保障給付水準も低下するという、手取り減と受給減というダブルパンチに対処できるプランニングが求められるのである。
●  給付費の大部分が年金・医療給付
  平成14年度における社会保障給付費は83兆5,666億円と、対前年比2.7%増である。国民所得がここ数年減少していることもあり、社会保障給付費の対国民所得の割合は17.8%だったが、現在は23.0%にまで上昇している。社会保障給付費の3分の1は税金でまかなわれていることから、社会保障給付費の膨張は増税に結びつく。
  給付費の部門別の内訳は、「高齢給付」が53.1%、「医療給付」が31.4%、「それ以外」が15.5%と、年金・医療が大部分を占めている。さらに高齢給付は前年度比5.9%である。
  また給付対象者をみると、高齢者に対する給付が給付費全体の69.9%を占め、その大部分は年金給付である。
●  FPは、顧客に収入を増やす手段と必要性をプランニング
  こうした給付費用増を主因として、国民負担率(国民所得に対する租税・社会保障費用の割合)も高まっている。2000年度では37.2%である。ここ40年間の推移をみると、租税負担率の伸びと比較して社会保障の伸びが際立っている(図表)。個人や企業が得た所得のうち可処分割合は6割に過ぎない。
  こうした手取り割合が低下し、手取りが増えない、同時に社会保障からの給付も今後減少するという状況で、FPの果たす役割は、(1)こうした厳しい現状を顧客に理解させる、(2)収入を増やす手段を顧客と考える、(3)限られた手取りを増やすための資産運用の重要性を顧客に理解させる、ことが必要となる。
  (1)については、キャッシュフロー表を作成して、数字をもって厳しさを認識させることが重要である。(2)はキャリア開発である。勤労者は収入=キャリアであり、キャリアを高めることがなりよりも有効な収支改善策である。(3)については、キャリア開発が一段落した年代に対して進めるべきである。
【図表 国民負担率の推移】
【図表 国民負担率の推移】
参考:国立社会保障・人口問題研究所「平成14年度社会保障給付費」
(可児 俊信、(株)ベネフィット・ワン主席コンサルタント、CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2005.04.25
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