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交際費課税の誤解
●  交際費とは?
  企業経営において、交際費はなくてはならないものだろう。しかし税務上は、一定額までしか損金処理を認められない。バブル期のように、企業の冗費・乱費の抑制という制度趣旨が緩んできたこともあり、損金処理できる枠は以前に比べて広がってきた。しかし損金処理されない部分があるという意味では、企業経営上は交際費以外の科目で処理したいところだ。
  税理士として顧問先に訪問していると、交際費で計上できないものまで、交際費として処理しているケースが見受けられる。交際費課税には誤解が生じているのだ。そこで、まず税務上の「交際費等」の定義から見ていく。
  交際費等とは、交際費・接待費・機密費・その他の費用で、法人がその得意先・仕入先・その他事業に関係のある者などに対する、接待・供応・慰安・贈答・その他これらに類するもののために支出するものをいう。例えば、交際費等に該当する支出としては、次のようなものがある。
  • 得意先・仕入先などの社外の者への慶弔見舞金等
  • 得意先・仕入先などを旅行招待するための費用等
  • 得意先・仕入先などとのゴルフプレー代 など
●  交際費の取り扱い
  税法上の交際費の取り扱いは、「法人が各事業年度において支出する交際費の額は、その事業年度の損金の額に算入しない」とある。つまり原則は、税務上の「交際費」に該当すれば損気処理はできないということである。しかし中小企業に配慮し、期末資本金額が1億円以下の法人については、次の金額の合計額を損金不算入することとされた。
  1. その交際費等の額のうち、「400万円定額控除限度額」に達するまでの金額の10%相当額
  2. その交際費等の額が定額控除限度額を超える場合のその超える部分の金額
例えば、S社が500万円の交際費を支出した場合、次の金額が損金処理されない金額となる。
(1)4,000,000×10%=400,000
(2)5,000,000−4,000,000=1,000,000
(3) (1)+(2)=1,400,000
●  交際費課税の誤解
  次に、交際費として処理できないものを交際費処理しているケースを挙げてみる。よくあるのが「他社が主催する懇親会などに参加するためのタクシー代」を交際費処理しているケースだ。これは接待を受けるための費用であり、その意味においては交際にかかる費用だが、先ほど見た「接待・供応・慰安・贈答・その他これらに類するもののために支出するもの」ではないので、旅費交通費など、交際費以外で処理して構わないのである。また利用する交通機関がバスや電車などであっても同様の取り扱いとなる。
  注意すべき点は、前提として「懇親会費用を全額相手先が負担しており、本来相手が払うべき交通費であり、こちらは接待を受ける側である」ということだ。こちらにもメリットがあり、「接待・供応・慰安・贈答・その他これらに類するもの」に該当すれば当然交通費・タクシー代は交際費となる。
(今村 仁、今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2005.04.25
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