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わが国の借金は年収の9倍超!今こそ危機感の共有を―経済同友会が提言
●  わが国の借金は約740兆円
  わが国の財政が危機的な状況にあることは、政府・経済団体・マスコミなどがことあるごとに喧伝してきたが、国民一人ひとりの実感は極めて乏しいのではないか。国民の間で危機感を共有していないことが、財政再建が進まない最大の原因だとして、国民による危機感の共有を訴えたのは、経済同友会がこのほど発表した「活力ある経済社会に向けた財政健全化の道筋」と題した提言である。
  わが国は、現在、80兆円の税収に対して35兆円もの財政赤字を計上し、長期債務、つまり借金は740兆円を超えている。この借金は、2004年度に国民が負担した消費税総額12.1兆円の実に60倍以上になる。GDPと比較してもその大きさは147%に達し、先進諸国のなかでもっとも深刻な状態にある。
●  年収630万円で年間280万円の赤字に相当
  このような著しい財政の悪化を実感できない要因は、数字が現実離れしていることにある。そこで提言は、冒頭において、危機感をより実感してもらうために、国の財政の現状を平均的な世帯の生活状況に引き直し、年収630万円で年間280万円の赤字を出していることに相当すると指摘する。こうした不健全な家計運営を続けてきた結果(現実の一般世帯であればとっくに破綻しているだろうが)、借金の総額は年収の9倍を超える5830万円にも達してしまった。それでも生活を切り詰める努力を怠り、毎年毎年、新たに借金を重ねているのが現状だ。
  健全な家計を維持するには、住宅ローンの場合では年収の5倍程度がほぼ限界。年収の9倍を超える借金を抱えていては、借金の返済負担を子どもにまで回さざるを得ないだろう。
  しかも、せっかく購入した住宅の価値が下落していたら大変である。膨大な借金の元利返済負担が重くのしかかり、老後への不安も高まるなかで、このままでは自己破産の危機が迫ってくる。仮に、住宅や車などの資産を売却し、預貯金もすべて借金の返済に充てようとしても、これでは生活の場や蓄えを失い、生活が成り立たない。
●  国民一人ひとりが危機的状況を受け止めよ
  健全な生活を取り戻すためには、借金を一定レベルまで減らす必要がある。それには、まず生活費を年収以下に切り詰め、さらに借金の利払いを含めて年収の範囲内に抑えれば、借金の拡大は防げる。
  しかし、より一層の努力をしなければ借金は減らせない。もちろん、生活を切り詰めるだけでなく、家計収入を増やすことも考えられる。どの程度の生活レベルを望み、そのためにどの程度がんばるかは、各家庭が選択すべきことだ。結局、家族全員が危機的状況を真正面から受け止め、将来の生活設計を立てたうえで、支出削減と収入増への約束事をきちんと定めて、家計を健全化していく以外に道はない、というのが本提言の論旨である。
  経済同友会の提言は、財政健全化は国民による危機感の共有が不可欠であるとしたうえで、国民一人ひとりの理解と努力が必要と訴えている。
参考:(社)経済同友会「活力ある経済社会に向けた財政健全化の道筋」
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、(株)タックス・コム代表)
2005.05.02
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