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国税庁OB税理士が出会い系企業の脱税に関与
●  OB税理士が脱税に関与
  国内最大規模の無店舗型テレホンクラブ「Sクラブ」(ツーショットダイヤル)を運営しているグループ会社6社が、2003年決算期までの3年間に所得計約12億円を隠し、法人税計約3億5,000万円を脱税したとして、東京国税局が6社とその代表者ら3人を法人税法違反(脱税)の疑いで東京地検に告発した。
  告発された法人は、東京都渋谷区の広告代理業「Mメディア」(Uソリューションに改称)と「M通信サービス」(東京都港区)、この2社のグループ会社4社。個人では、6社の実質的経営者で旧Mメディア社のK元社長(38歳)と、同社のH社長(31歳)、元大阪国税局職員で元税理士のN取締役(46歳)の3人。
  N氏は1982年4月に大阪国税局に採用され、1993年7月に退職、98年2月に税理士登録した。しかし、2004年9月に法人税約9,000万円を脱税したとして、顧問を務めていた大阪府の自動車部品販売会社とともに大阪国税局から法人税法違反容疑で告発され起訴されており、現在、大阪地裁で公判中。その後、税理士も廃業している。
●  脱税の手法は?
  今回の脱税事件の詳細はまだ分かっていないが、関係者によると、旧Mメディア社などは架空の退職金を計上して経費を水増ししたり、売り上げを除外して税務申告し、所得を圧縮していたという。また、隠した所得は、預金として保管していたらしい。
  退職金を使った脱税行為は、明らかに税理士の関与をうかがわせる手法である。元税理士のN氏は、税理士としての知識を生かして脱税に積極的に関わっていたと考えられる。
●  過去にもこんな事件が…
  過去には、元国税局長の脱税事件もあった。2002年1月、4年間で総額約7億3,000万円の所得を隠匿、約2億5,000万円を脱税していたとして、元札幌国税局長のH税理士が東京地検特捜部の捜査で逮捕された。脱税金額もさることながら、本来は税金の番人であるべき国税局長という責任あるポストの経験者で、しかも事件当時はOB税理士という立場であったことに世間は大きな衝撃を受けた。
  ほかにも、元浜松西税務署長のOB税理士が、税務調査で3,000万円の所得隠しを指摘されたり、元福岡国税局長の証取法違反、2003年には元熊本国税局局長の脱税指南などが発覚している。
  現在の日本は、多額の借金を抱えながらかつてのような急激な経済成長はもはや望めず、高齢社会の進展により労働力人口が減少していくという社会構造の大きな変化と節目に立たされている。いまこそ税金リテラシーを国民が高め、税金の使われ方に関心を持たなければならない。その先頭に立つのが税理士であり、税務職員ではないか。元国税局関係者や元税理士の脱税事件を見るにつけ、情け無いと深く思う。
(今村 仁、今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2005.05.09
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