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終身雇用の支持率78%!成果主義からの揺れ戻し?
〜“日本人の仕事観”調査報告〜
●  高まる終身雇用、年功賃金への回帰志向
  企業従業員の職業意識を前回と同じ質問項目で"定点観測"する調査結果が発表された。
  まず、企業の雇用慣行に対する支持をたずねたところ、終身雇用の支持率は78.0%と高い。1999年調査では72.3%であり、雇用流動化の動きとは逆行して高まる結果となっている。年功賃金制度についても66.7%が支持しており、99年調査の60.8%から増えており、これも成果主義・業績主義とは逆行している。
  また、雇用慣行への支持率を年代別にみると、終身雇用の支持率は30代男性で64.9%、40代男性で78.7%、50代男性で81.8%であり、一社への帰属意識は若年層ほど弱まっている。年功賃金への支持率は30代男性で59.3%、40代男性で66.5%、50代男性で68.9%となっており、こちらは世代による格差は少ない。成果によって差がつくより同じように昇給することが望まれているわけであり、「成果主義は給与の二極化をもたらす」という認識が企業内で浸透していることの表れだろうか。
●  実績や努力による成果配分には肯定的
  望ましいキャリアについては、「1つの企業に長く勤め、管理職または専門職となる」が42.9%と最も多く、「転職を繰り返して管理職または専門職となる」が26.1%と次いでいる。「独立自営」は13.3%と少ない。転職・独立志向は合計して約4割である。
  昇進や昇給という企業成果の果実の分配の原理として、「実績を挙げた人ほど多く得るのが望ましい」が83.8%、「努力した人ほど多く得るのが望ましい」が86.9%であり、「必要な人が多く得るのが望ましい」の29.8%、「平等が望ましい」の18.0%を大きく上回っている。
  会社の成果配分の原理として、実績や努力によって報われ、それが公平であることは意識の中では認められている。
●  多くの従業員が“負け組”回避を望む
  終身雇用や年功賃金がいまだに支持されているのは、日本的な雇用慣行の崩壊が大多数の企業従業員にとって、リストラや賃金抑制という形になって現れていることの反映であり、雇用の流動化・成果主義が従業員全体にとって不利な状況を生み出していることが分かる。
  実績や努力で差がつく配分原理は容認するが、その結果が自分にとって不利な結果となり、勝ち組・負け組、さらには二極化と呼ばれる状況に陥るのは望まないということである。
  雇用慣行の崩壊、雇用の流動化がチャンスとしてではなく、自分にとってリスクであるととらえられているのは残念である。
出所:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「第4回勤労生活に関する調査」(2005年3月)
(可児 俊信、(株)ベネフィット・ワン主席コンサルタント、CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2005.05.30
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