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見直し後の賃金制度、労使とも6割以上が満足せず
〜東京都が実態調査〜
●  賃金制度に対する中小企業労使の“本音”
  東京都は4月26日、中小企業の労働条件などについての調査結果を発表した。この調査は、変わりつつある賃金制度と労使交渉の実態を把握し、労使や一般都民に提供する目的で毎年実施されているもの。今回の調査で興味深い点は、やはり賃金制度についてであろう。調査結果によれば、賃金表は6割以上の事業所にあるが、規模が小さいほど「ある」割合が低く、「29人以下」では半数以下である。
  もちろん賃金表があればいいというわけではないが、従業員に賃金の基準がわかりやすい形で明示されているということは大事なことであろう。賃金表は人事制度のポイントとなる公平性、透明性などを、従業員に訴えて納得してもらうための重要な役割を果たしているといえるのではないか。
  また、定期昇給制度の見直しを考えている事業所は49.4%、見直し提案を受けている労働組合は31.0%。見直しの方向は「定期昇給の自動的昇給部分を引き下げ、職務・成果に応じた部分を増やす」が41.8%で最も多く、次いで「定期昇給制度は廃止し、成果や業績による賃金決定を考えている」が31.7%となっている。
●  見直し後の賃金制度、不満の理由は?
  2000年以降、賃金制度を見直したのは、事業所調査では46.5%、労働組合調査では、49.8%となっている。賃金制度を見直した理由(複数回答)は、事業所調査、労働組合調査とも「従業員の成果や業績の評価を明確にするため」が6割で最も多く、「賃金決定要素の年功的部分を払拭し査定部分を増やすため」、「従業員の意欲を高めるため」がそれぞれ4割程度となっている。見直し後の評価については、「ほぼ満足している」のは事業所調査で35.9%、労働組合調査では26.0%にとどまり、「満足していないが現状ではやむを得ない」も含めると、労使とも6割以上が満足していないという結果になる。
  満足していない理由が気になるところであるが、おそらく「人事制度がきちんと運用できていない」、「評価者の訓練などもできていない」なども理由の1つではないか。
●  労使ともに満足できる賃金制度改革が必要
  極端な成果主義の導入により、社内全体のモチベーションが下がり、その結果として業績もダウンした企業の事例をメディアでも見かけることが増えてきた。成果を出した人に報酬を多く出すという単純な制度では限界がある。お金だけでは「ヒト」は動かすことはできないし、ヒトがヒトを評価していくのは大変難しいことである。
  各企業や労働組合もこのような調査結果を参考にしながら、じっくりと時間をかけて賃金制度改革を進めていく必要があるのではないだろうか。
出所:東京都産業労働局「賃金制度と労使交渉に関する実態調査」
(庄司 英尚、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2005.05.30
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