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地方公務員の非常識な通勤手当は税法上どうなるのか?
●  274市町村で徒歩通勤者に通勤手当支給
  地方公務員に対する非常識な厚遇が次々と露見している。先日は、民間企業では到底あり得ない、徒歩での通勤者にも通勤手当を支給している自治体が274市町村あることが、今年1月1日時点で行った総務省特別調査で明らかになった。税務上、給与所得者が支給を受ける通勤手当のうち一定額以下は非課税とされている。しかし、徒歩での通勤者に支払った通勤手当はどうなるのだろうか。
●  公務員厚遇は西日本に多い?
  前記の総務省特別調査によると、徒歩通勤者に通勤手当を支給していた274市町村の内訳は、142市(うち政令指定都市1)、132町村で、さすがに都道府県ではゼロだった。
  通勤手当は、通勤のために交通機関などを利用する場合に、その経費が職員の生活費を圧迫しない趣旨で支払われる手当。国家公務員の場合は、原則、通勤距離が片道2キロ以上で、交通機関利用者や自動車・自転車などの利用者が対象となる。ところが、今回の調査結果では、徒歩でも通勤手当を支給していた274市町村のうち、244市町村は通勤距離が2キロ未満でも支給していた。
  地域別では、「愛知県」の38自治体がもっとも多く、「福岡県」(28自治体)、「埼玉県」(23自治体)、「大阪府」(19自治体)、「岡山県」(同)などが続いている。どちらかというと西日本に多く、北海道や東北では支給例はなかった。通勤距離が2キロメートル未満でも支給していた自治体のうち、支給月額が最も多かったのは愛知県の「碧南市」(5750円)で、同じく愛知県の「西尾市」(5700円)が続く。最低は「北九州市」の100円。
●  徒歩通勤者に支払った通勤手当は全額課税対象になる!
  さて、徒歩通勤者に支払った通勤手当の税務上の取扱いだが、これは、交通費との名目で支給していたとしても、全額が給与所得として課税対象となる。というのも、所得税法では、通勤交通費の非課税限度額の範囲を電車やバスなどの交通機関利用者か自動車や自転車などの交通用具を使用する通勤者に限っているからだ。交通機関利用者であれば、その負担した運賃などが1カ月10万円を限度に非課税となる。
  また、自動車や自転車など交通用具を使って通勤する場合は、片道の通勤距離に応じて非課税限度額が定められているが、この場合も片道2キロ未満は除かれている。つまり、もっとも短い通勤距離でも片道「2キロ以上10キロ未満」で4100円が非課税となる。最高は「45キロ以上」で2万4500円が非課税。ただし、交通機関を利用したならば、これらの金額を超える場合は、10万円を限度に定期代相当額が非課税とされている。
  ところが、上記のように、徒歩でも通勤手当を支給していた274市町村のうち、244市町村は通勤距離が2キロ未満でも支給していたのだ。支給額が最も多かった碧南市の場合、通勤手段に関係なく、1キロ未満は月4950円、1キロ以上2キロ未満は月5750円など距離に応じて8段階の通勤手当を支給していた。世論の批判に配慮し、4月からは1キロ未満を2500円、2キロ未満を5000円に減額したというが、それでも相変わらず2キロ未満まで支給している。この通勤手当は非課税とはならないのだが、税法どおり給与所得に加えているのだろうか…。
  総務省は、「国家公務員に準じるように要請している」というが、碧南市をはじめ各市町村の“一般常識”には大きな疑問符が浮かんでいる。
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2005.05.30
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