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健保組合財政の現状
〜健全化には抜本策が必要〜
●  財政赤字を自己負担引き上げで解消
  医療費の高額化、高齢化に伴う老健拠出金の増加、企業のダウンサイジングによる保険料収入の減少など、健康保険組合財政を取り巻く環境が厳しさを増している。
  環境の悪化を反映して、健保組合の解散も多く、1992年に1,800を超えていた組合数は、2005年4月では1,568にまで減少。加入者数(被保険者数と被扶養者数の合計)も最盛期の3,292万人から、同じく2,978万人へと1割近く落ち込んでいる。
  下の図表は、健保組合全体の経常収支の推移(2004年度は予算、2005年度は予算の早期集計からの推計)である。年々赤字額が拡大し、その都度、自己負担割合を引き上げることで赤字を解消してきた。1997年10月から自己負担割合が1割から2割に引き上げられたことで、1996年度の2,000億円近い赤字からいったん脱している。2000年度は介護保険の創設により、医療費の一部が介護保険に肩代わりされて赤字が減少したが、その後再び増加、2003年4月に自己負担割合を3割に引き上げて経常黒字となったが、2004年度は再び赤字に転落することが予想されている。
●  財政好転の理由は老健拠出金の減少
  2005年度は一転してわずかながら黒字の予算となっている。この理由は老健拠出金の額が14.3%減少し、1兆2,450億円となったためである。老健拠出金は健保の経常支出の25%を占めており、その増加が健保財政悪化の最大要因であった。2002年10月から老健拠出金の対象者の年齢が引き上げられて対象者が減少したことと公費負担が増えたこと、そして過年度に拠出した老健拠出金の精算があることが2005年度の減少の理由である。
  一方、もうひとつの拠出金である退職者拠出金は14%増の8,086億円となっており、拠出金全体では5%減にとどまっている。
●  二極化進む健保財政
  もうひとつの傾向は、保険料率は平均で7.402%と16年度比0.1%低下したことである(ちなみに政府管掌健保は8.2%)。2005年度に保険料を引き上げた組合が65ある一方、引き下げた組合も251にのぼり、健保財政の二極化が進んでいる。ITやコンピュータ関連の業種の健保は、保険料率は低い。いまや日本最大の健保である人材派遣業健保も2004年度の保険料率を引き下げて6.0%としている。大型の総合健保の中には、保険料率を積極的に引き下げて、さらに優良な加入企業を増やし、スケールメリットを享受する戦略をとるところもある。それができない業種や健保組合では、財政悪化が進んでいる。
  厚生労働省は財政悪化健保に対して合併・統合による財政健全化を促す方向だ。具体的にはこれまでは同業種間でしか認められなかった合併を同地域内でも認めること。
  しかし、これは対処療法に過ぎず、また団塊世代の大量退職が始まる2007年度から退職者拠出金が跳ね上がることは確実な情勢。
  2006年度からの高齢者医療制度の改革で、抜本的な方策が示されることを期待したい。
【図 健保組合全体の経常収支推移】
【図 健保組合全体の経常収支推移】
参考:健康保険組合連合会「平成17年度健保組合予算の早期集計について」
(可児 俊信、(株)ベネフィット・ワン主席コンサルタント、CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2005.06.06
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