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サラリーマンにズシリ…
〜増税一色の政府税調報告〜
●  個人所得課税の見直し
  首相の諮問機関である政府税制調査会は、5月27日、個人所得課税の見直しに関する報告書の大枠を固めた。そこで、その報告書の内容をまとめてみる。
  まず、全体としては、増税色の強い内容となっているが、その中でも目玉とされる項目は、@給与所得者の経費相当である「給与所得控除」の縮小A退職金への課税強化B配偶者控除の見直し――である。また、事業所得者である自営業者に対しては、帳簿管理の厳格化や納税者番号制度の導入が提言され、徴税の強化が鮮明となっている。これらは税の公平性を確保していこうという思惑だ。
  一方、税制の基本構造の見直しも検討課題としてあがっている。国と地方の税・財政を見直す「三位一体の改革」に伴って、国税である所得税を減らし、地方税である住民税を増やそうと考えているようだ。具体的には、個人住民税を10%に一本化し、国・地方合わせた全体の最高税率は維持する模様だ。
●  政府税制調査会が提言する見直し項目
<増税項目>
  • 個人住民税の均等割りの引き上げ
  • 退職金課税の強化
  • 給与所得控除の縮小
  • 所得区分の見直し
  • 配偶者控除の縮小・廃止
<減税項目>
  • 金融一体課税の導入
  • 子育て減税の創設
<その他>
  • 納税者番号制度の導入
  • 個人住民税の税率を10%に統一
  • 「長者番付」の縮小・廃止
●  給与所得控除も縮小
  今回の提言の背景にあるのは、従来の家族形態や雇用形態が大きく変化している、その社会構造の変化に中期的に税制も対応していこうという発想だ。
  その中で、「給与所得控除」の縮小が提言内容に盛り込まれている。これは、現状で多くのサラリーマンが享受している給与に対する概算経費のことであるが、それを縮小していこうということなので、多くのサラリーマンにとっては増税となる。
  現在、例えば、年収600万円のサラリーマンであれば、年間174万円の給与所得控除=概算経費が認められている。年収の約3割に相当し、月々に直すと、一月当たり14万5,000円となる。実際これだけの経費がかかっているとは思えない。ちなみに、スーツや靴代は、現行法では経費にならない。こういった指摘を考慮して、「給与所得控除」の縮小を打ち出したものと思われる。
  しかし、今後、定率減税の縮小や消費税率の引き上げが予定されていることを考えると、同時期にというのは、納税者の抵抗もあって難しいと言わざるを得ない。それを考慮してか、税調も実施時期については明言を避けている。
(今村 仁、今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2005.06.06
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