>  今週のトピックス >  No.1048
不動産融資に新たな牽引者?
〜過熱するノンリコースローン〜
●  不動産業向け融資は昨年比15%増
  6月4日付の日経新聞朝刊によると、近年の東京都心を中心とした地価の下げ止まり感や一部の地域における地価の上昇を反映して、銀行における融資のなかで、不動産に振り向けられる割合が増加しているという。日本銀行(福井俊彦総裁)による国内銀行の設備資金への貸し出し統計によると、2004年度(2004.4.1−2005.3.31)は2003年度(2003.4.1−2004.3.31)に比べて、新規融資全体は2.9%の減少。しかし、不動産業向け融資は昨年度と比べて15.3%増となっており、新規融資額は8兆1,780億円に達している。不動産業向けの融資残高を見ても、2004年末で約48兆円の規模だ。
●  牽引役は新型不動産融資
  銀行の不動産向け融資が急増しているなかで、特に目立つのが新型不動産融資=ノンリコースローンである。2003年度の金融機関のノンリコースローン残高は、約2兆7,500億円だったが、2004年度では5割増の4兆2,200億円となった。
  中でも、特に残高が多いのはみずほ銀行で、約1兆円。次いで中央三井信託銀行の約9,700億円となっている。
【金融機関のノンリコースローン残高(単位:億円)】
 
2005年3月期
2004年3月期
みずほ銀行
約10,000
約5,000
中央三井信託銀行
約9,700
約8,200
住友信託銀行
約6,500
約4,300
三井住友銀行
約6,000
約4,000
三菱信託銀行
約4,000
約2,500
東京三菱銀行
約3,000
約2,000
UFJ銀行
約3,000
約1,500
合  計
約42,200
約27,500
(日銀による国内銀行の設備資金への貸し出し統計より)
●  ノンリコースローンの特徴と将来性
  ノンリコースローンとは、特定の不動産事業に融資を実行し、その返済をその特定事業の収益だけに限定するもの。従来の融資制度と異なり、追加担保や個人保証が不要で、ローン返済ができなくなった際に、担保になっている不動産以外に債権の取り立てが及ばない非遡及型融資である点が大きな特徴である。非遡及型融資=ノンリコースローンは、米国では主流。担保割れとなっても追加担保を求められないことなどから、一般の融資よりは貸し倒れリスクが高く、金利も高めの設定となっている。
  銀行の置かれている現在の状況や不動産業界の現状を考えると、このノンリコースローン、今後ますます増加するのではないだろうか。
(今村 仁、今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2005.06.13
前のページにもどる
ページトップへ