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税務調査は時期によって熱意が違う?
〜税務調査にまつわる噂の真偽〜
●  評価対象期間に濃淡がある!?
  税務調査は、2〜3月の個人の確定申告期間中は納税者に立ち会う税理士が忙しいため、国税当局も原則遠慮する。4月からはまた調査が再開されているが、4〜6月の調査は税務職員の"士気"がいまひとつ上がらないといわれる。それは、税務職員の勤務評価にあまり反映しない期間であることが要因らしいのだ。税務職員の定期異動は毎年7月10日と法律で決まっていることから、期間によって勤務評価の反映に濃淡が出てくるのだ。
  定期異動では全国で約5万6千人の税務職員が異動の対象となる。もちろんすべての職員が1年で異動するわけではないが、例えば税務署では、地域との馴れ合いによる不正を防ぐためという名目で、最長でも3年程度で別の税務署に異動する。すると、毎年6万人近い職員の3〜4割が異動することになるから、それなりの準備期間が必要になる。そこで、一般職員の勤務評価に基づく昇進・異動は大体4月の終盤には終了する。その結果、4〜6月の仕事の実績は勤務評価にあまり反映されないことになる。
●  “銅の評価”の言葉の意味
  ちなみに、税務内部ではこの期間の評価を「銅の評価」と言うそうである。勤務評価に最も反映されるのは定期異動後7〜12月の仕事の実績で、この期間を「金の評価」、続く1〜3月を「銀の評価」と称しているらしい。評価に関係なく1年中仕事をしてほしいのは当然だが、税務職員も人の子、評価に反映しない期間に力が入らないのも無理からぬことといえようか。
  個人の調査でいえば、2〜3月の確定申告が終わり、その後、申告内容を税務署内部でチェックする机上調査を経て、調査対象者が選定される。
  というわけで、本格的な調査は異動後、夏休みが明けてからとなる。ただ、4〜6月の法人の調査が安心だというわけではない。申告内容がひどいものであれば、事業年度をまたいで処理を延長することもありうる。やはり、正しい申告を心がけた方が無難なのはいうまでもない。
●  12月・1月決算法人は調査が少ない?
  また、「12月決算法人や1月決算法人は調査の機会が一番少ない」という噂があることをご存知だろうか。不公平だと憤る向きもおられようが、その要因は、国税当局の事業年度からくる調査のサイクルや上記の税務職員の勤務評価の対象期間などにあるという。
  国税当局の事業年度は7月から翌年の6月である。1年決算の法人は年1回申告書を提出するが、これに対して国税当局は一事業年度内に必ずその申告内容を認めるか調査するかを決めることになっている。一方、法人は決算期終了後、原則2カ月以内に申告書を国税当局に提出しなければならない。提出された申告書は数カ月後に当局で内容を精査されるから、仮に調査となればさらに数カ月後先となる。
  このような調査までのサイクルからみると、国税当局の新事業年度が始まる7月10日の国税職員の定期異動後に申告書を処理するのは2月決算法人からとなる。申告書の内容が精査されて、疑問があれば調査対象となり、疑問がなければ調査省略となって処理が終わる。こうしてみると、サイクルの後の方になる12月決算法人や1月決算法人に対しては、内部での申告書の精査や調査の時間的な余裕がどうしても少なくなる。
  一方で、前記の税務職員の勤務評価の対象期間が微妙に絡んでくる。勤務評定が終わった4月から6月の実績は評価に反映されにくい。こうなると、事業年度の後半の処理にならざるを得ない12月・1月決算法人に対する熱意が低下することも想像に難くない。
  もっとも、申告内容がひどいものであれば、個人の調査と同様に事業年度をまたいで処理を延長することも十分に考えられる。特に部門の統括官が異動しない場合は、処理を延長することも少なくないという。
  ともあれ、12月・1月決算法人は調査機会が少ないという噂は、少なからず根拠があることのようである。とはいえ、決算期を変更しても、その結果についてはもちろん責任は負いかねるので、念のために……。
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2005.06.13
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