>  今週のトピックス >  No.1052
手元資金なしで節税が可能?
〜保険を見直すなら節税も!〜
●  終身保険を払い済み保険に変更すると…
  保険、特に生命保険を使った節税対策は色々とあるが、そのほとんどが当年度において生命保険料という資金が必要になる。しかも、いわゆる定期保険系については損金処理されることが企業受けしていることもあり、資産計上とされる終身保険については、昨今企業でのニーズはどちらかというと低いのではないかと思う。
  終身保険における生命保険料は、企業会計上、保険積立金として資産計上され、損金処理できない。しかし、すでに企業が契約者となり終身保険に加入している場合に、その終身保険を払い済み保険に変更すれば、手元資金が必要なく節税対策になるということをご存知だろうか。
  つまり、新たな生命保険契約を結ぶのではなく、すでに加入済みの積み立て系の終身保険をその解約返戻金をもとに、保険期間を変更せずに保険金額を低く設定し直すことにより保証を継続するいわゆる「払い済み保険」に変更することによって、節税対策になる場合があるのだ。ただし、払い済みに変更すると、特約部分は自動消滅するので注意されたい。
  ちなみに、似た制度として延長保険というのがあるが、これは、解約返戻金をもとに保険金額を変えないで定期保険に変更して保障を継続する保険のことで、通常保険期間は短縮される。
●  保険積立金1000万円の場合
  では、終身保険を払い済み保険に変更して、手元資金なしで節税対策ができる場合を例に解説する。
<保険積立金1000万円のケース>
保険の種類終身保険
保険料毎年100万円
支払い済み期間 過去10年
契約者会社
  この場合は、現在のバランスシート(貸借対照表)を見ると、資産の部に「保険積立金」が1000万円計上されているはず。この時点での解約返戻金が700万円とすると、保険積立金1000万円との差額である300万円が損失ということになる。
  この終身保険を「払い済み保険」に変更すると、その含み損といえる300万円を顕在化することができる(詳しくは下記「法人税基本通達9-3-7の2」)。もちろん、そのまま資産に計上しておいても構わないが、積極的に節税対策に使うこともできる。
  払い済みにするかどうかは、節税が可能であるからという理由でするべきではないのは言うまでもないが、生命保険を見直そうと考えているのであれば、単に解約ではなく保障が残る「払い済み」という方法も一考に価するのではないだろうか。
法人税基本通達9-3-7の2(払済保険へ変更した場合)
法人が既に加入している生命保険をいわゆる払済保険に変更した場合には、原則として、その変更時における解約返戻金相当額とその保険契約により資産に計上している保険料の額(以下9-3-7の2において「資産計上額」という。)との差額を、その変更した日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入する。ただし、既に加入している生命保険の保険料の全額(傷害特約等に係る保険料の額を除く。)が役員又は使用人に対する給与となる場合は、この限りでない。
(注1) 養老保険、終身保険及び年金保険(定期保険特約が付加されていないものに限る。)から同種類の払済保険に変更した場合に、本文の取扱いを適用せずに、既往の資産計上額を保険事故の発生又は解約失効等により契約が終了するまで計上しているときは、これを認める。
(注2) 本文の解約返戻金相当額については、その払済保険へ変更した時点において当該変更後の保険と同一内容の保険に加入して保険期間の全部の保険料を一時払いしたものとして、9-3-4から9-3-6までの例により処理するものとする。
(注3) 払済保険が復旧された場合には、払済保険に変更した時点で益金の額又は損金の額に算入した金額を復旧した日の属する事業年度の損金の額又は益金の額に、また、払済保険に変更した後に損金の額に算入した金額は復旧した日の属する事業年度の益金の額に算入する。
(今村 仁、今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2005.06.20
前のページにもどる
ページトップへ