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注目されるインド株投信
〜その魅力と注意点〜
●  インドに注がれる個人投資家の“熱い視線”
  インド株など新興国の株式を投資対象としたハイリスク型の投資信託が個人投資家の人気を集めている。そこで今回は、新興国への投資の中でも近年、特に残高を増加させているインド株投信、ならびにインド投資について考えてみたい。
1 投資対象としてインドが注目される理由
  インドが投資対象として注目される理由は、
  • 中国に次ぐ世界第2位の人口を有すること(2001年現在で10億2702万人)
  • 2003年の経済成長は、8.3%と中国に匹敵する高成長を遂げていること(GDPは2005年現在6,006億ドルで中国の約1/3)
  • 2003年のインドの産業構造におけるサービス産業の比率が50%を突破していること。また、世界中のIT産業で活躍するインド人は多く、その意味でも今後、IT業界をインド企業がリードする可能性を秘めていること
  • 証券取引所開設は1875年で、アジア最古の歴史をもつ。その点では中国株よりも歴史がある
  ――などが挙げられる。なかでも、世界2位の人口とIT産業を支える頭脳という点に個人投資家も大きく注目しているといえる。つまり、「中国の次はインド」という個人投資家の期待がインドへの投資を加速させているということであろう。
2 インド株投信が人気を集める理由
  しかし、いかにインド市場が魅力的といえ、日本でインドの有価証券に投資することは容易ではない。中でもインド企業の個別株への投資は非常に難しいのが現実である。当然、市場環境などの情報入手も極めて難しいであろう。そこで、投資信託の活用にスポットが当てられたというわけである。
  なぜなら投資信託は、「運用を投資信託会社(運用のプロ集団)に任せる」という特徴をもち、個人が通常投資することが困難な市場であっても、投資信託会社という運用のプロ集団を活用することで、容易に個人の投資を可能にするからである。しかも、多数の投資家を集めるため、小額から(通常は1万円以上)から投資可能である。この2つの特徴が、着実に個人投資家の資金をインド市場へ呼び込んでいると思われる。
  実際にインド株式を主な投資対象とした投資信託の純資産残高は次の表のようになっている。
  設定日 純資産残高
JFインド株ファンド 05年1月 312億円(05年6月末)
PCAインド株式オープン 04年9月 352億円(05年5月末)
HSBCインドオープン 04年11月 227億円(05年4月末)
  また、上記の3ファンド以外にもいくつかのインド株投信が設定されており、すでに投信を経由してのインド株式投資は1,000億円を突破しているものと思われる。しかも、注目すべきはこれらの投信が設定されたのは、昨年の後半ぐらいであり、その点から考えると、わずか1年足らずで1,000億円近い運用資金がインド株へ投資されたことになる。
3 インド投資への注意点
  インド市場、またインド株投信がいかに魅力的とはいえ、やはりインドへの投資は欧米などの先進国とは違い、いくつかの注意が必要となる。
  1つ目は、インドの株式市場への投資は先進国に比べ、情報量や取引金額はどうしても小額になっているということである。つまり、将来有望という銘柄に投資資金が集中した場合、バブル的な価格高騰が起こる可能性があることである。
  2つ目は、インドはパキスタンとの紛争問題を抱えているため、その紛争が激化した場合に、市場が暴落や取引停止などのいわゆるカントリーリスクが先進国に比べ高いことである。
  3つ目は、インド株投信という商品自体に関する留意点で、次の3点を指摘しておきたい。
  • 国内株へ投資する投信と比べ、手数料が高めになる傾向があること(投資情報の収集に手間・時間等がかかるため)
  • インド株式の組み入れ比率をチェックする必要があること(インド株投信といっても、商品毎にインド株の組み入れ比率が異なるため)
  • 解約した場合に現金化するのに要する時間をチェックする必要があること(取引額の多い先進国の株式市場に比べると、取引額が小額となるインド株は、現金化するのに時間を要する可能性があるため)
  以上のように、インド市場に関する注意点が2点、そしてインド株投信自体に対する注意点が3つ、合計5つが主な注意点といえる。
  インド株投資は国内株にはない魅力があり、また現在も続く中国投資のブームも追い風となって、当分インド投資ブームが続く可能性が高い。しかしその一方で、先進国の株式にはないリスクがあることをしっかり理解して投資する必要があることを、忘れてはならない。
※当記事は、あくまで筆者の見解や予想、考え方をご紹介したものであり、個別商品の売買の推奨を意図したものではありません。
2005.06.20
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