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職場ストレス時代に警鐘
〜精神障害の労災認定が急増中〜
●  厚生労働省が労災補償状況を調査
  脳血管・心臓疾患が原因となった過労死や職場でのストレスによる過労自殺がマスコミなどで取り上げられることが多くなっている。しかし、国民の関心は高いものの、その実態となるといまだによくわからないのが現状だ。このような中、厚生労働省はさる6月17日、平成16年(2004年)度の「脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状況」を発表した。
  この調査結果によると、平成16年度の脳・心臓疾患の請求件数は816件で、前年度に比べ74件(10.0%)増加した。しかし、このうち労災として認定された件数は294件で、前年度比20件(6.4%)の減少となっている。また、このうち過労死に至ったのは150件(同8件減少)だった。年齢別では40〜49歳、60歳以上で請求件数が増加している。
【脳血管疾患及び虚血性心疾患等(「過労死」等事案)の労災補償状況】
(件数)
 
平成12年度
平成13年度
平成14年度
平成15年度
平成16年度
脳・心臓疾患
請求件数
617
690
819
742
816
認定件数
85
143
317
314
294
うち死亡
請求件数
319
335
認定件数
45
58
160
158
150
●  精神障害認定は4年で3・6倍!ストレス増大が原因?
  一方、仕事のストレスなどによる精神障害の労災認定件数は、平成16年度で130件(同22件増加)となり、平成12年度と比べると請求件数で2.47倍、認定件数では、3.61倍と大幅に増加している。このうち自殺(未遂含む)の認定件数は45件(平成16年度)で前年比だと5件の増加だが、平成12年19件と比べると約2.37倍とその急増ぶりが浮き彫りになっている。
  視点を変えて見てみると、業種別では建設業、卸売・小売業、医療福祉業の認定件数が増加している。医療福祉業の認定件数が増加傾向にあるのは、介護関連の仕事に就いている人が増加していることも理由の1つではないだろうか。肉体的にも精神的にもハードな医療福祉業などでは、各企業側も相談窓口などをきちんと設けることができていないのが現状ではないだろうか。
  一方、職種別では、専門技術職の認定件数が増加しているのが特徴である。システムエンジニアなどの過重労働などが精神障害の原因になっていることは想定できる。
  年齢別では30〜49歳の請求、認定件数が増加している。企業にとっては緊急に取り組まなければならない課題ではないか。
  おそらく今回の調査でも数字に現れてこない潜在的な精神障害等の労災認定対象者は多数存在していると思われる。政府はこのことを頭に入れて、各企業とともに有効な解決方法を探していかなければならない。
【精神障害等の労災補償状況】
(件数)
 
平成12年度
平成13年度
平成14年度
平成15年度
平成16年度
精神障害等
請求件数
212
265
341
447
524
認定件数
36
70
100
108
130
うち自殺
(未遂を含む)
請求件数
100
92
112
122
121
認定件数
19
31
43
40
45
出所:厚生労働省「脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状況」
(庄司 英尚、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2005.06.27
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