>  今週のトピックス >  No.1058
同族会社の留保金課税の停止措置にご注意!
●  業績向上企業は留保金課税に意識を
  同族会社の留保金課税とは、同族会社(3人以下の株主等で、持株割合が50%超の会社)が内部留保した金額に対して、特別税率で追加的に課税する制度である。課税留保金額は、留保金額から留保控除金額を控除して計算するので、最低でも1500万円以上の留保所得がなければ課税されない。これまではあまり意識がなかった企業も、業績が上向き、留保所得が発生するにつれ、留保金課税に留意しなければならないわけだ。
  留保金課税では、2000年度税制改正で一定要件を満たす中小企業に対する停止措置の特例が創設されている。その後、適用事業年度の延長や適用対象の拡大が行われ、2003年度税制改正においては、自己資本比率(総資産に占める自己資本の割合)が50%以下の中小法人(資本金1億円以下)が停止措置の適用対象に加えられたが、最近、その自己資本比率に関するミスが多発しているようだ。申告後に停止措置の対象になると気づいても、更正請求しての還付は認められない。慎重な対応が求められる。
  留保金課税制度では、どんなに留保所得があろうとも停止措置の対象に該当すれば税金を払わなくていいことになる。ところが、この停止措置そのものを忘れてしまったり、自己資本比率50%要件の計算の誤りで、本来停止措置の対象になれるにもかかわらず、留保所得に特別税率を適用して申告するといったミスが少なくないようだ。特に会計ソフトを使用しているケースでは課税停止の特例に対応していないものが多いので、自己チェックを働かせないと、自動的に留保金課税を選択してしまうことになるので要注意だ。
●  「自己資本比率」にミス多発
  留保金課税不適用の判定の基礎となる自己資本比率は、「自己資本/総資産×100」で計算するが、「経営指標としての自己資本比率」とは異なり、分子の「自己資本」の中に、同族株主等からの負債(社長借入金・子会社借入金等)が含まれる。ただし、同族株主の判定の基礎となる株主等と特殊関係にある個人や法人であっても、その同族会社の株式(出資)を持たない場合は同族株主等に含まれないとされている。
  これをうっかり失念して、加算しなくてもいい借入金を加えたため自己資本比率が50%以上となって、留保金課税の停止措置を適用しなかった例も少なくない。
  そのほか、(1)自己資本に加える同族株主等からの負債は原則として有利子負債に限定されるのに、すべての負債を加えて50%超となった、(2)自己資本比率の算定は、前期末の貸借対照表を基にすべきところを、当期末のもので算定して50%超となった――などのケースもある。
  他方、留保金課税を回避する目的での借入金による自己資本比率調整は否認される可能性があるので注意したい。つまり、自己資本比率を低下させるために、同族株主等以外から借入れを行って期末の総資産額を増加させ、翌期に返済するなどといった行為については、その借入金自体がなかったものとみなされる可能性がある。留保所得に係る税務上の取扱いは、税理士など専門家との相談が不可欠である。
●  留保金課税が停止される要件
  ちなみに、留保金課税が停止される場合とは、青色申告を提出する同族会社で、(1)自己資本比率50%以下の中小法人(資本金1億円以下)、(2)設立後10年以内の中小企業者、(3)「新事業創出促進法」の認定を受けた事業者、(4)前事業年度の損金の額に算入される試験研究費及び開発費の合計額が、収入金額の3%を超えている中小企業者、のいずれかに該当する場合とされている。
  (1)〜(3)については2006年3月31日までの、(4)については2005年4月13日までの間に開始する各事業年度に適用される。また、(2)と(3)については、2005年度税制改正において中小企業支援3法の統合に伴う改正が行われており、2006年4月決算法人から新法に基づく新たな手続きを事業年度開始までに行う必要がある。
  いずれにせよ、留保金課税を判断するにあたっては税理士など専門家の助言を仰ぎたい。
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2005.06.27
前のページにもどる
ページトップへ