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相続税の物納を円滑に―政府、来年度税制改正で実現めざす
●  相続税3つの納付方法
  現在、相続税の対象となる人は、全死亡者のうち約5%と言われている。つまり、100人が亡くなった場合、そのうち約5人が相続税の課税対象になる可能性があるということだ。
  この割合で考えると、相続対象となるのはほんの一握りの裕福な家族ということにはなるが、しかし現実はそういった相続対象者の資産は、ほとんどが不動産や自社株といった換金性の無いものの場合が多い。こういう相続の現状をかんがみて、税法上も相続税の納付方法を現金一括払い以外に他の2つの方法を認めている。
  その1つが延納という納付方法である。延納とは、相続税額が10万円を超え、かつ納税義務者が納付期限までに金銭で納付することが困難である事由がある場合に、申請により、その納付が困難である金額を限度として、一定の年数の期間に分割して納付することができる制度のことをいう。また担保が必要な場合もある。
  延納の期間は原則5年で、その間は利息も発生する。
●  使いづらい現行の物納制度
  現金一括納付が原則の相続税の納付方法の中で、例外規定の2つ目は、物納という納付方法である。
  物納とは読んで字のごとく、相続税を金銭以外の財産である物で納付することであるが、問題はやっかいなことに、物納が認められる条件が厳しいことである。
  その条件は、〔申告期限までに相続税物納申請書を提出する〕〔金銭納付が困難な事情がある〕〔物納できる財産は相続によって取得した財産であり、管理及び処分が容易なもの〕〔物納できる財産の種類や順序が決まっているため物納に適する財産であることも必要〕――となっている。
  ちなみに物納順序は、
  1. 国債、地方債、不動産、船舶
  2. 社債、株式、証券投資信託、または貸付信託の受益証券
  3. 動産
――となっている。
●  税制改正で物納円滑化めざす
  政府は今まで物納の許可基準が不明瞭であった現状を改め、相続税法に「物納の対象外の財産」を明記する方向で、2006年度税制改正での実現をめざす方針だという。ということは、今後は「物納の対象外の財産」以外は原則物納を認めるということになるので、納税者にとっては朗報と言える。
  同時に政府は、物納を申請してから許可が出るまでの期間が長いケースも問題視し、今後は許可までに期間を設け、物納完了までの期間を短縮する方向で検討しているようだ。
  こうした政府の要望が通れば、今後は物納が今まで以上に使いやすい制度になることだろう。ちなみに補足事項として、初めに延納を選択してあとから物納に切り替えることはできないが、物納から延納に切り替えることはできる。
  延納か物納か迷っている時は、とりあえず物納を選択して、あとで延納に切り替える方がよい場合が多いことを付け加えておく。
(今村 仁、今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2005.07.04
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