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高級ブランド定着に挑戦するトヨタの“夏の陣”
●  トヨタが新ブランド車投入
  トヨタ自動車が高級プレミアムブランド「レクサス」の販売を8月末から開始する。
  大理石を使った床に接客用の黒皮のソファーを並べた高級感あふれるショールームを、富裕層が住む地域を中心に全国180店舗展開し、400万円から700万円の高級車を2005年には2万台、以降年間5〜6万台のペースで販売するという。
  しかし、国内高級車市場は欧州車の牙城といわれ、そのブランド信仰は一朝一夕には切り崩せるものではない。一体、トヨタに勝機はあるのか。関係者のみならず熱い視線が注がれるトヨタ「レクサス」戦略のアウトラインを紹介してみよう。
●  母国に凱旋する「レクサス」
  なぜ高級車なのか、しかもなぜ「レクサス」というブランドなのか。
  トヨタが国内展開に乗り出すブランド「レクサス」は、もともと欧米の高級車需要をターゲットに開発された高級車。後発のハンデはあったものの、それを超える高い性能を集約することによって、米国では2003年に26万台を販売。米国高級車市場で首位の座を争うほどの強い支持をユーザーから獲得した。同様に、保守的な欧州でも強い存在感を放っている。海外では普及価格帯の小型車中心だったトヨタのイメージを一変させる――それほど「レクサス」成功の衝撃は大きいものだった。
  今回の国内導入は、もちろん成熟した日本の市場で新たな需要を掘り起こすのが狙いだが、収益性の高い高級車市場で争うためには、従来のトヨタのブランド体系では、輸入車が持つ強い個性に対抗できないという判断がある。
  そこで、欧米で成功した「レクサス」をマザーマーケットである日本に凱旋させ、トヨタブランドとは切り離した形で展開することで欧州高級車の牙城を切り崩そうという戦略なのである。
●  ブランド定着の課題
  自動車の新車販売台数は2004年で約394万台と、ここ2年連続で減少傾向にある。小型車で需要掘り起こしをした結果、国内各社の収益性は低下した。ならば、高級車市場に挑むしか道はない。トヨタのみならず、日産も慎重な姿勢ながら「インフィニティ」の導入計画を検討している。
  だが、新しい高級ブランドの定着化には、課題も多い。
  例えば価格。同じトヨタ製でありながら、欧州車に近い高価格の「レクサス」をユーザーが受け入れるためには、ブランドに対する強い信頼が必要だ。それを納得させるサービス体制を提供できるかどうか。しかも、トヨタには「クラウン」などの高級車を扱う既存店舗との競合も問題になる。
  マーケットにおいて、ブランドの力は大きい。しかし、ブランドは決して魔法の杖ではない。新たに生まれるものがあれば、滅びゆくものもある生き物なのである。トヨタの挑戦を、ブランド創造の神話を重ね合わせながら見守る、そんな夏になるかもしれない。
参考:日本経済新聞6月19日付「自動車の高級ブランド」
2005.07.11
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