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裁判で納税者の主張はどの程度認められるか
●  国税当局の処分に不服があるときの救済制度
  税務署に申告した所得や税額が少なかったり、確定申告をしなければならない人が申告しなかったときは、税務署長は、調査した結果に基づき、更正・決定などの処分を行う。また、未納の税額があり督促をしてもなお税金が納付されないときは、財産などを差し押さえる処分を行う。
  このような国税当局の処分に納税者が不服がある場合は、行政上の救済制度がある。
  まず、税務署長に、処分の通知を受けた日の翌日から2カ月以内に異議申立てを行う。そこで、税務署長はその処分を改めて見直し、その結果を納税者に通知する。その通知内容に不服があるときは、通知を受けた日の翌日から1カ月以内に、国税不服審判所長に対し審査請求する。審判所長は、納税者の不服の内容について審査し、その結果を裁決として通知する。ここまでが、行政上の救済制度である。
  このような行政上の救済制度を経ても、なお処分に不服があるときは、裁決の通知を受けた日の翌日から6カ月以内に裁判所に訴訟を起こして処分の是正を求める司法上の制度がある。
  そこで興味深いのは、このような一連の救済制度のなかで、納税者の主張はどの程度認められるのだろうかということである。
●  救済割合は異議申立てで13.5%、審査請求で14.6%
  国税庁・国税不服審判所がこのほどまとめた不服の申立て及び訴訟の概要によると、今年3月までの1年間(2004年度)において、納税者の主張が認められたのは全体の13.8%(1160件)だったことがわかった。
  税務署への異議申立ての発生件数は、申告所得税や消費税が大幅に減少したことから、前年度から23.3%減少の4272件だった。
  処理件数は、「取下げ」727件、「却下」292件、「棄却」2887件、「一部取消」529件、「全部取消」81件の合計4516件。納税者の主張が一部でも認められたのは610件で、処理件数全体に占める割合(救済割合)は前年度を1.1ポイント下回る13.5%だった。
  税務署の処分を不服とする国税不服審判所への審査請求の発生件数は、徴収関係以外の課税関係が軒並み減少したことから、前年度より10.4%少ない3087件だった。
  処理件数は、「取下げ」558件、「却下」245件、「棄却」2086件、「一部取消」363件、「全部取消」130件の合計3382件。納税者の主張が何らかの形で認められた救済割合は14.6%で前年度より7.4ポイント減少している。
●  訴訟の半分がストックオプションと航空機リース事案
  裁判所への訴訟提起となったのは、前年度を12.2%上回る552件と1969年度(617件)以来の高水準となった。このうち、ほぼ半数はストックオプション事案(66件)と航空機リース事案(72件)が占めている。終結した478件は、「取下げ」60件、「却下」12件、「棄却」349件、「国の一部敗訴」23件、「同全部敗訴」34件。納税者の救済割合は11.9%となり、ここ30年間でもっとも高い数字。もっとも、敗訴件数57件中22件がストックオプション訴訟で、これを1件とすると敗訴割合は7.9%となる。
  この結果、2004年度中に異議申立て・審査請求・訴訟を通して納税者の主張が一部でも認められたのは、処理・訴訟の終結件数の合計8376件のうち1160件で、その割合は13.8%。
  つまり、国税当局の処分に対する納税者の主張が一部でも認められる割合は1割強だったということになる。
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2005.07.11
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