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第三分野保険の積立ルールを整備
〜金融庁が報告書〜
●  現状は各社独自データで料率を算出
  保険ニーズが死亡保障から医療・介護保障に移っている。これを受けて、金融庁は2004年に発表した金融改革プログラムにおいて医療保険・介護保険などの第三分野保険について責任準備金の積立ルールや事後検証ルールを整備していくことを掲げている。今般それに関するワーキングチームの報告書がまとめられた。
  これまで第三分野保険について入院率や要介護率といった基礎率の検証は不十分で、その保険料率の適切性は各保険会社にゆだねられていた。
  積立金の積立ルールについて、こうした第三分野の保険は、保障内容やリスクの範囲が多岐にわたるため、標準的な発生率を判断することが難しい。
  そのため、まずは事故の発生率を正しく予測し、料率算定に反映したり事後検証するために、データの収集と整備が重要とされる。各社でデータを収集し相互にフィードバックする場合、各社の引き受け基準によってばらつきが出る可能性がある。そこで公的なデータも併せて収集・整備することも行う。損害保険料率算出機構や日本アクチュアリー会、生命保険協会、日本損害保険協会などの活用が考えられる。
●  危険準備金の追加積立も検討
  今後の社会の高齢化や医療保険制度の改革によって発生率がおおきくぶれる可能性がある。こうしたリスクは予測困難であり、通常の予測を超えるリスクが発生する恐れがあるため、保険料積立金に加えて危険準備金を積み立てる。当然、危険準備金の積立水準は事前の設定だけでは十分ではない。当初の予測から次第に乖離することも考えられるため、10年、20年といった一定期間後に当初予測とのブレを検証し、危険準備金の追加積立を行うことも考えられる。
  そのほかのリスク対策としては、入院率や要介護率の異常な発生に備えて、再保険を利用することも考えられる。しかし第三分野は将来のリスクを見積もることは難しい。そのため再保険の保険期間は3〜5年間が限界といわれる。
●  基礎率の中途変更権の留保
  保険事故の発生率がぶれるリスクに対して他に考えられる手段としては、保険会社に基礎率変更権を与える方法がある。これは保険事故が想定を超えた場合、当初の保険料率では保険給付をまかなうことが困難となる。そこで基礎率を変更し保険料率を事後に見直すことを認めるのである。
  この方法の問題点は、疾病・介護リスクの高い加入者ほど継続して加入し、リスクが濃縮されること。その結果として安い保険料率で勧誘し、その後保険料率を引き上げるので販売モラル上の問題が残ることである。基礎率変更権を保険会社が持っていることを契約者に十分説明するとともに、変更権の発動基準を明確にする必要がある。
  このように検討案をまとめると、まずはデータの収集・整備を行い、各社がそのデータを利用できるよう公的機関が活用される。データに基づき必要な保険料積立金の確保を行う。そして予測できないリスクに備えて事後に危険準備金の水準の検証と追加積立を行う、という手順が今後具体化されていくことになる。
参考:金融庁「第三分野の責任準備金積立ルール・事後検証等について」
(可児 俊信、(株)ベネフィット・ワン コンサルティング室、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2005.07.19
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