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転換期を迎えつつある米ドル・ユーロ相場
●  ドル・ユーロ相場のトレンドに変化?
  米ドル・そしてユーロを取り巻く環境が、ここ4年ほど続いていたトレンドから転換期を迎えつつある。そこで今回は、米ドル(以下、ドル)を取り巻く環境がどのように変化しつつあるのかについて考えてみる。
1.最近までのドル相場
  ドル相場は、ここ3年ほど円・ユーロに対し、ドル安の傾向があった。下の図1および図2は、ドルの対円(1ドルが何円であるか)・対ユーロ(1ドルが何ユーロであるか)の02年3月から05年6月末までの推移を示したものである。この3年は円・ユーロに対し、ドル安傾向であったことが明らかである。
2.ドルはどう変化し始めたのか
  しかし、ドルを取り巻く環境が最近、変化しつつある。下の図3は、今年の5月から7月4日までのドルの対円相場である。ここ2カ月で見れば、じわりとドル高・円安傾向となりつつあることが分かるのではないのであろうか。
【図3 ドル・円相場(05年5月〜05年7月)】
【図3 ドル・円相場(05年5月〜05年7月)】
  このようなドル高は、対ユーロに対しても同様の傾向が表れている。その背景には、米国政府のさまざまな政策(米国投資における優遇税制やFFレートの利上げ継続など)による効果によって、急速なドル買いが進行していることがある。
  中でも個人投資家ということで言えば、米国金利(FFレート)の度重なる利上げによるドルへの投資が見直されつつあることが大きな注目材料といえる。FOMCは、米国国内景気の過熱感(特に住宅バブルとなりつつある傾向を沈静化するため)を受け、FFレートの引き上げを1年以上に渡り0.25%刻みで9回実施し、7月10日現在で3.25%(図4の03年07月からのFFレートの推移参照)となっている。
  これによって、ユーロの金利を1.25%も上回る状況となったのである。これは、ドル安・ユーロ高を作り出した最大の要因である「ユーロ金利はドル金利よりも高い」という状況が、FFレートの一連の利上げで解消されたことを意味する。言い換えれば、個人投資家が金利を比較して投資外貨を選択する場合には「ユーロよりもドルが有利」という、いわゆるドル高要因の一つが完成したといえる。
【図4 FFレートの推移(03年7月〜05年6月)】
【図4 FFレートの推移(03年7月〜05年6月)】
3.今後の個人投資家としてのドル相場の変動に影響を与える注目点
  今後のドル相場の変動に影響を与える事由としては、
  1. FFレートが今後どこまで引き上げられるか
    ⇒引き上げが行われるほど、ドル高となる可能性が高い
  2. 原油相場の動向
    ⇒原油高はドル高傾向となる可能性あり
  3. 日米欧それぞれの経済動向
    ⇒経済の好調な国の通貨ほど高くなる可能性あり
――などが考えられるが、現在のFFレートの水準や米国経済が底堅く推移していることを考えれば、このドル高傾向は当面続く可能性が高いといえるのではないか。
注)当記事は、あくまで筆者の見解や予想、考え方をご紹介したものであり、個別商品の売買の推奨を意図したものではありません。
2005.07.19
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