>  今週のトピックス >  No.1071
普及進む確定給付企業年金(DB年金)の現状
●  今年4月以降に発足相次ぐ
  2002年4月から始まった新しい企業年金「確定給付企業年金(DB年金)」は、2005年7月で1,215件に達した。今年の3月末時点では987件であったことから、この4月以降に発足が相次いだことが分かる。1,215件のうち706件は厚生年金基金が代行返上して移行したもの。別表でも分かるとおり、代行返上した厚生年金基金は、その大部分が基金型に移行している。逆に厚生年金基金でなかったものが基金型になった事例は8件にとどまっている。
  厚生年金基金連合会がDB年金の現状について行った今年のアンケート調査を分析してみよう。
  DB年金の他に併用している年金制度の有無については、「確定拠出年金と併用」が17.2%、「税制適格年金と併用」が7.3%であるが、73.0%はDB年金のみで他の年金との併用はないとの回答だった。
  一方、給付面では、年金を受給するまでに必要な加入者期間は「20年」が55.2%、「15年以上20年未満」が31.9%となっている。年金支給は「終身年金」が27.1%、「有期年金」が34.3%、「終身年金と有期年金の併用」が38.1%となっている。遺族給付は大部分のDB年金にあり、その割合は84.2%である。障害給付も91.9%で支給されることになっている。
  また、脱退一時金を受け取ることができる最低の加入者期間は「3年」が45.5%、「1年未満」が24.6%であった。
●  積み立て不足が発生しにくいCBプランが人気
  DB年金の中でも、キャッシュバランスプラン(CBプラン)が人気だ。厚生年金基金連合会のアンケート調査では、老齢給付金についてCBプランを導入しているのは24.7%、在職中の年金積立はCBプランではないが受給している年金額がCBプラン型となっているもの(類似型という)が13.9%とであり、合計すると38.6%が何らかの形でCBプランを導入していることになる。厚生労働省の2005年6月時点の調査でも、DB年金1,180件中、CBプランは467件と約4割を占めている。
  類似型を含みCBプランが人気を集めている理由として、CBプランでは通常の企業年金でいう保証利率に相当する利息クレジットの水準を実際の金利水準に連動させる設計が可能なため、積立不足が発生しにくいことが挙げられる。類似型を採用する理由も、金利水準に連動して受給年金額を変動させることで、現時点の金利水準とかけ離れた年金給付額が支払われるのを防ぐことができるからである。
●  資産運用機関の評価や人材不足など課題も
  厚生年金基金連合会のアンケート調査では、年金資産の運用体制を強化する取り組みとして、資産運用委員会の設置をあげたのが54.2%と最多。コンサルティング会社の利用が24.1%とそれに続く。一方、資産運用上の課題としては、資産運用機関の評価が困難であることをあげる回答が53.7%と最も多かった。また、資産運用は専門的で理解できないとの回答も31.7%あり、年金を担当する適切な人材の不足という現状もうかがえる。
【DB年金の従前の形態別分類】
  厚生年金基金
からの移行
他の企業年金
からの移行または新設
基金型DB年金 559 8 567
規約型DB年金 147 501 648
706 509 1,215
出所:厚生年金基金連合会「DBアンケート調査」
(可児 俊信、(株)ベネフィット・ワン コンサルティング室、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2005.07.25
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