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労働者の6割、「仕事に精神的ストレスを感じる」
〜人口減少社会の仕事意識〜
●  管理的な仕事は精神的ストレスの“温床”
  独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)は7月19日、「人口減少社会における人事戦略と職業意識に関する調査」の結果を発表した。
  それによると、「仕事に精神的ストレスを感じる」と答えた労働者は60.9%と半数以上が何らかのストレスを感じていることが分かった。職種別にみると、多いのは管理的な仕事で66.5%、専門的・技術的な仕事も64.6%であった。管理職は、経営陣と部下の板ばさみになり、多大なストレスを感じている実態を裏付けるデータだといえよう。
  今回のアンケート調査は、労働力人口が減少し、労働者の年齢構成が大きく変化する中、企業の雇用管理の動向や労働者の意識がどのように変化しているのかを明らかにする目的で実施されたもの。各企業も、こうした社会の変化を受けとめ、時代の流れに適合した対策をしていかなければならないだろう。
●  ストレスの原因は“将来への不安”?
  労働者の約6割が仕事に精神的ストレスを感じている、その理由は何か? 調査結果によると、「会社の将来性に不安」「仕事の責任が重い」「仕事量が多い」「職場の人間関係が悪い」などがその理由にあげられている。いまや上場企業でも倒産し、有名企業でも大リストラを実行して人員削減をすることが当たり前になっており、一流企業に入社すれば一生安心であるという幻想が崩壊した現在、会社の将来性について深く考えるのは当然のことであるし、それがまたストレスになるということも納得できる。リストラの影響で仕事の量が急激に多くなったという話もしばしば仄聞する。大きな仕事を任せられてやりがいを感じると同時に、仕事の責任の重さに悩んでいる人も多いのではないだろうか。
●  仕事に何を求めるかで先行き感に隔たり
  職業生活に関して見込んでいる先行きについては、「わからない」が53.4%で最も多いが、一方で、「希望がもてない」と答えた者が27.1%で、「希望がもてる」とする者の17.1%を上回る結果が出た。
  「希望がもてない」とする理由は、「日本全体の景気の先行きが期待できない」49.1%、「会社の先行きが期待できず雇用不安感がある」47.5%、「昇進・昇給に期待がもてない」42.8%、「現在の仕事に期待がもてないうえ、転職の自信もない」32.1%となっている。
  ただし、仕事をする上で重視するものとして「業務の達成感」をあげる者は、そうでない者と比べて職業生活の先行きに「希望がもてる」とする割合が高い。「自分の能力を高めること」「仕事を通じての社会貢献」についても同様の結果となった。
  労働者が職業生活の先行きに希望をもてるようにするためには、各企業がこれらの調査結果を細かく分析し、人事制度などにより強く反映していくことが必要である。
  その結果として労働者の仕事のモチベーションが高まり、各企業の業績も良くなり、労働者にも何らかの形で還元されていけば、労働者個人にとっても、企業にとっても、ともにハッピーな形になるのではないだろうか。
出所:独立行政法人労働政策研究・研修機構「人口減少社会における人事戦略と職業意識に関する調査」
(庄司 英尚、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2005.07.25
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