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人材投資促進税制の中小企業特例措置
●  総額の20%を選択できる中小企業
  今年4月から、教育訓練費の一定割合を法人税・所得税から税額控除する人材投資促進税制が導入された。教育訓練費用を、過去2事業年度より増加させた法人や個人事業者が対象となり、増加額の25%の税額控除が受けられる。控除額は税額の10%が上限で、上限を超えた額を翌年度に繰り越すことはできない。中小企業に対しては手厚い特例措置があるので、改めて同制度の活用を考えてみたい。
  中小企業者の場合、基本制度(増加額の25%の税額控除)に代えて、教育訓練費の総額の一定割合(最大20%)を税額控除する特例措置を選択することができる。その税額控除率は、(1)増加割合が40%以上の場合は、一律20%となるが、(2)増加割合が40%未満の場合は、増加率の2分の1の率となる。
●  中小企業は地方税でも納税額が軽減される
  特例措置の具体的な適用例を中小企業A社のケースでみてみよう。
A社
教育訓練費支出額
前々期650万円
前期750万円
当期1000万円
当期法人税額2500万円
(1)適用年度の教育訓練費の額:1000万円
(2)比較教育訓練費の額:700万円=(650万円+750万円)/2
(3)教育訓練費増加割合:42.8%=(1000万円−700万円)/700万円
(4)税額控除額:200万円=上記(1)1000万円×20%(税額控除率)
※増加割合が40%以上なので、控除率は最大の20%が適用される。
  上記の場合で、仮に(3)の教育訓練費増加割合が20%の場合は、増加割合が40%未満なので、控除率は、「20%×0.5=10%」となる。(5)税額控除限度額は「250万円」=2500万円(法人税額)×10%だから、(4)の200万円は、(5)の限度額250万円を超えていないので、200万円が控除額となる。これで、A社は、教育訓練費を300万円増加させたことで、200万円の法人税が減額されることになる。
  一方、法人住民税・法人税割の課税標準となる法人税額は、同制度において税額控除された後の額となるため、法人税の税額控除額の一定割合に相当する金額を納めなくてよいことになる。
  上記のケースでは、「200万円(税額控除額)×20.7%(税率は東京23区の場合)=41.2万円」が減額されることになる。ただし、中小企業者以外の法人については、この限りではない。
●  制度適用には前もって添付書類の準備が必要
  同制度の適用を受けようとする場合は、確定申告書等に控除を受ける金額を記載し、かつ、その金額の計算に関する明細書の添付が必要になる。また、「適用年度の教育訓練費の額」と「比較教育訓練費の額(前2事業年度の教育訓練費の額)」について、一定の必要事項を記載した書類を添付する。特に、過去の教育訓練費分については、今のうちに該当分を拾い出して見直し準備することが必要だろう。
  記載すべき必要事項は、(1)該当費用に係る教育訓練を行った年月日(2日以上継続して行った場合はその期間)、(2)教育訓練等の内容、(3)教育訓練等に参加した使用人の氏名、(4)該当費用の支出年月日、支出した内容及び金額、相手先の氏名・名称、住所、本店・主たる事務所の所在地、(5)その他参考となるべき事項。
  添付書類は、これらの内容が記載されていれば様式は自由だ。研修の際に作成した書類を添付することもできる。
  注意すべき点としては、(ア)決算時に未払いだったとしても、実際にその事業年度に行われており、損金経理されていれば適用対象となること、(イ)対象となる教育訓練費の範囲(外部研修での法人負担の交通費は対象外など)、(ウ)対象者の範囲(役員や使用人兼務役員などのほか、内定者等の入社予定者も対象外など)――等が挙げられるが、改めて制度の内容を確認しておくことは不可欠である。
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2005.07.25
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