>  今週のトピックス >  No.1075
“人口減少社会”は人事戦略にどんな影響を与えるか
●  人口減少は人事戦略上マイナス
  「少子・高齢化社会」という言葉は、いまや「人口減少社会」という言葉に置き換えられようとしているが、その人口減少が企業や労働者にどんな影響を与えるか、独立行政法人労働政策研究・研修機構が行ったアンケート調査「人口減少社会における人事戦略と職業意識に関する調査」の結果がまとまった。職業意識に関する部分は、すでに本欄「今週のトピックス」No.1073で紹介したので、今回は企業の人事戦略に与える影響について取り上げたい。
  まず、人口減少が人事戦略に与える影響については、「マイナスの影響が大きい」が68.7%と全体の2/3を占め、「特に影響はない」20.1%、「プラスの影響が大きい」2.1%を大きく上回った。特に従業員規模1,000人以上の企業では、81.5%が「マイナスの影響が大きい」と回答している。
●  大企業は多様な対策を立案
  人口減少への対策としては、「人的能力の向上を図る」が60.2%、「定年延長・再雇用」が59.5%,「女性の活用」が35.9%、「外注化の推進」が20.7%、「機械化を行う」が15.0%となっている。従業員規模1,000人以上の企業で見ると、「人的能力の向上を図る」67.9%、「定年延長・再雇用」66.7%,「女性の活用」51.2%、「外注化の推進」25.9%、「機械化を行う」15.4%と多方面な対策を打ち出しているのが目立っている。
  また、“2007年問題”と称される団塊世代の大量定年については、「人件費が削減できる」56.1%、「ポスト不足が解消される」29.3%、「年齢構成が平準化される」25.4%など、メリット面に期待を寄せる一方、「退職一時金の負担が大きい」48.7%、「技能継承への危惧」30.9%、などデメリットを危ぶむ声も多いようだ。
●  技能継承については半数が無策
  退職一時金の高負担については、ここ数年ポイント制退職金への移行、企業年金の改革と確定拠出年金の導入などの対策が講じられてきた。
  技能継承に関しては、特に技能工や生産工程の仕事、専門的・技術的な仕事の職種など現業・技能部門に対しての危惧が強い。それに対する工夫としては、「ベテランの定年延長・継続雇用」が26.3%、「マンツーマン指導の充実」が17.4%、「危惧される分野や職種への人員の重点配置」が10.8%、「技能のデジタル化,マニュアル化」が10.7%である一方、「何も行っていない」も49.4%と多く、大半の企業が何ら対策を講じていないという現実が露呈される結果となった。
出所:独立行政法人労働政策研究・研修機構「人口減少社会における人事戦略と職業意識に関する調査」
(注)「人口減少社会」という言葉には、若手社員の減少、団塊世代の大量定年、社員の平均年齢の上昇という問題点が含まれている。団塊世代の大量退職については、ニッセイ基礎研究所が1947〜1949年生まれの就業者数は501万人と試算している。
(可児 俊信、(株)ベネフィット・ワン コンサルティング室、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2005.08.01
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