>  今週のトピックス >  No.1077
介護保険制度改革、大詰め作業第一弾
〜施設給付の見直しにともなう報酬改定〜
●  施設における介護報酬の見直し
  改正介護保険法の成立を受けて、その具体的内容を詰める動きが慌しくなってきた。
  さる7月14日の社会保障審議会介護給付分科会では、今年10月から介護保険施設における居住費及び食費が自己負担となるのに合わせ、施設における介護報酬の見直し案が諮問された。審議会はこの諮問を原案通り了承し、来年4月に新介護報酬がスタートするまでの間、暫定的に適用されることとなる。
●  厚労省が示す施設住居費の基準額
  施設居住費の基準額については、すでに6月20日に厚生労働省から原案が出されている。
  それによると、まず施設の類型を、(ア)ユニット型個室(施設内をいくつかのユニットに分け、ユニットごとにリビングを確保しつつ、各居室は個室としたもの)、(イ)ユニット型準個室(ユニット型ではあるが、個室は従来型の4人部屋などを改造、居室間は固定式の間仕切りになっているもの)、(ウ)従来型個室(ユニットごとの共同スペースがない個室)、(エ)多床室(従来の4人部屋)――の4つに分類。
  それぞれの月あたり基準額を、(ア)6万円(イ)(ウ)5万円(エ)1万円、とした。(特別養護老人ホームについては、今回の諮問に際して《イ》のみ月3万5,000円と修正されている)
  一方、食費(食材費+調理費相当分)については、一日あたり1,380円、月にして4万2,000円が利用者負担の基準額となる。ちなみに通所サービスにおける食費も、この基準額に応じて利用者が全額負担をする。
●  理念に逆行する報酬単価のアンバランス
  さて、今回の報酬改定であるが、居住費などを利用者の自己負担としたことで、その分を減額するというのが焦点の一つである。
  ところが、ここでおかしな現象が生じてしまった。ユニット型個室と多床室(4人部屋)では居住費にして一日あたり1,650円、月あたり5万円もの差が生じる。この大きな差を介護報酬に反映させた結果、従来型の多床室にもっとも高い報酬単価をつけてしまったのだ。居住環境の理念としては、「ユニット型個室>多床室」をうたっているのに、保険からの給付はまったく逆になる。行政の施策としては、完全なミスと言ってもいい。
●  現実味欠いた加算による栄養管理確保
  食費に関しても、首を傾げたくなる点がある。要介護者の中には、栄養状態や嚥下機能などによって食事に特別な管理が必要になるケースも多く、そうした管理部分まで保険給付の範囲外にしてしまうことは大いに問題がある。そこで、施設ごとに栄養士を配置した場合に一日10単位、管理栄養士を配置した場合に一日12単位を加算することとした。また、管理栄養士を配置して医師の指示のもとに栄養ケア計画を作成した場合にも1日12単位を加算、療養食を提供した場合には1日23単位の加算がつくとしている。
  だが、仮に管理栄養士などを置いた場合に、加算だけで人件費が確保できるかといえば、現実問題として大変に難しいと言わざるをえない。地域によっては、「管理栄養士の確保自体が難しい」という声もあり、栄養ケア計画などがどこまで現実的に機能するのかは大いに疑問が残る。むしろ、施設内ケアプランをまずきちんと評価しつつ、その中から栄養管理に占める人手や手間をピックアップして検証するという手順が必要ではないか。
  全体的に机上論のまま、見切り発車という感が否めない。年明けにも進められる介護報酬の改定までに、現場のモニタリング作業をぜひとも実施して欲しいものだ。
「基準額」の意味について
居住費・食費の価格は、10月より原則として施設側が自由に設定できるが、低所得者には所得に応じた負担限度額が設けられ、価格との差額は保険から補足給付がなされる仕組みとなっている。ただし、厚生労働省が示した「基準額」を超えて価格を設定した場合、低所得者の負担限度額との差額について、保険からの補足給付が行われなくなる。
(田中 元、医療・福祉ジャーナリスト)
2005.08.01
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