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金融新時代の決算対策、3つのポイント
〜格付など新視点導入すべき〜
●  10年前と変わらない決算対策でいいのか
  経済環境や社会環境は大きく変わったのに、中小企業における決算書がほとんど変わっていないことに私は疑問を感じている。決算書が変わっていないということは、それに伴う「決算対策」もほとんど変わっていないということである。
  企業は環境適応業だと言われている。周辺環境が今まで以上に大きく変わっているのに、「決算対策は今までと同じ?」ではいけないであろう。
●  格付が上がるように決算を組む
  具体的にいうと、今大事な決算対策は大きく3つあると思う。
  まず、銀行に目を向けた決算対策である。
  ほんの5年ほど前、銀行の融資姿勢というのは担保や過去の取引実績、さらには担当者の“鉛筆なめなめ”で融資可能かどうかや金利などが決まっていた。しかし今日、銀行の融資姿勢ははっきりと変わった。
  現在、銀行は、金融庁の指導もあり「格付(かくづけ)」をもとに融資を決定している。「格付」は、融資の決定だけではなく、融資可能金額や金利、返済方法、つまり銀行が融資するときにおけるすべてにおいて影響を及ぼしていると言える。
  今、求められている決算対策としては、「格付」を意識した決算対策である。さらに踏み込んだ言い方をすると、「格付が上がるように決算を組む」必要がある。
●  格付を下げない節税対策が必要
  とはいっても、銀行だけに目を向けた決算を組むと、余分な税金を払うことにもなりかねない。今はキャッシュフローが大事な時代でもある。可能な節税対策は実行するべきである。
  そこで、2つ目に求められている決算対策は、節税対策である。
  「あれ?これは今までもあった決算対策ではないか」と思われたかもしれないが、実はその節税対策の中身が、今までの決算対策と違うのである。今までの節税対策というのは、例えば決算間際に退職金を支給して大きな損失をつくって利益を減らして税金を回避するというものであった。ただこれでは、お金がその分出て行くことになるし利益も減る。そうすると実は、格付を大きく下げることにもなる。
  今の時代の節税対策としては、
「格付を下げない節税対策」が大事である。
●  従業員の理解は必須
  そして最後に、「従業員に公開できる決算書とする」、ということもこれからの決算対策としては大事である。
  今まで計数面に関しては、シークレットにされている会社が多かったように思う。それでも従業員は右肩上がりを信じて一生懸命仕事をしてくれたかもしれないが、今は時代が違う。右肩上がりを信じている従業員はいない。そんな経営環境の中で、従業員に一生懸命働いてもらおうと考えるならば、「決算書の公開」は必須事項である。もちろん、従業員の頑張りに関係の無い部分まで公開する必要はないであろうが。
  つまり、これからの決算対策としては、
1.格付が上がるように決算を組む
2.格付を下げないで節税対策をする
3.従業員に公開できる決算書とする
  この3つが大事な柱になるであろう。
(今村 仁、今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2005.08.08
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