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相続税の物納・延納申請ともに減少傾向―国税庁調査
●  物納申請はピーク時の4分の1に激減
  国税は金銭による納付が原則だが、相続税については、財産課税という性格上、延納によっても金銭納付が難しい理由がある場合は、一定の相続財産による物納が認められている(相続税法第41条〜第43条)。
  国税庁がこのほどまとめた2004年度(平成16年度)「相続税の物納申請状況等について」によると、今年3月までの1年間の物納申請件数は3,065件、金額では1,288億円で、前年より件数で35.8%減、金額で44.5%減となり、ともにここ10年間ではもっとも低い数字となった。
  物納申請件数は、バブル崩壊後の1990年度以降、地価の下落や土地取引の停滞などを反映して著しく増加した。それまで年間500件前後に過ぎなかったものが、1992年度には1万2千件台まで急増したが、1999年度以降は下降線をたどり、2004年度で6年連続の減少となった。2004年度の申請件数はピーク時1992年度の約24%とほぼ4分の1に、金額では同じくピーク時1992年度の約8%にまで落ち込んでいる。
●  物納は申請の約7割に許可
  一方、2004年度の処理対象件数は前年度から引き継いだ処理未済件数8,217件と同年度の申請件数3,065件を合計した1万1,282件だったが、このうち5,314件が処理された。
  処理件数そのものは前年度に比べ15.1%(946件)減少したが、申請件数が大幅に減っていたことから、年度末での処理未済件数は、前年度より24.7%減の5,968件、金額では27.0%減の4,777億円となった。国税当局の効率的な処理促進が図られたといえる。
  2004年度の処理の内訳は、約69%にあたる3,639件が許可。物納財産として不適格として24件が却下。残りの1,651件は納税者自らが物納申請を取り下げている。
  なお、物納に不適格な財産の例としては、質権・抵当権その他の担保権の目的となっている財産、所有権の帰属などについて係争中の財産、共有財産(共有者全員が持分の全部を物納する場合は除く)などが共通項目として挙げられる。
●  延納申請もピーク時の15%に急減
  また、相続財産のなかには、土地や建物などをはじめ、直ちに現金化できないものがあり、納税に支障をきたす場合も少なくない。そのようなケースでは、一定要件を満たせば年払いでの延納の許可が受けられる。
  国税庁がまとめた2004年度相続税の延納申請状況によると、今年3月までの1年間における延納の申請件数は7,026件、金額では2,020億円だった。前年度比では件数は15.7%(307件)減、金額は16.0%(384億円)減となり、ともに4年連続の減少となった。
  延納申請件数は、ピーク時の1991年度は4万7,360件、2兆4,214億円にのぼったが、バブル崩壊後の地価の下落とともに減少傾向をたどり、2004年度には、申請件数ではピーク時の約15%、金額では同約8%にまで減少している。
●  延納は申請の9割強に許可
  一方、2004年度の延納処理状況は、前年度からの繰越2,232件と新たに申請された7,026件の計9,258件が処理対象だったが、うち7,457件、2,225億円を処理し、1,801件、462億円が処理未済として翌年度に繰り越された。
  処理された7,457件のうち、約92%にあたる6,851件が延納を許可されており、要件を満たさずに却下されたのが64件、納税者自ら申請を取り下げたのが542件となっている。
  なお、延納の許可を受けるためには、(1)相続税額が10万円を超えていること、(2)金銭納付を困難とする事由があり、その金額の範囲内であること、(3)申請書を期限内に提出すること、(4)延納税額に相当する担保を提出すること――のすべての要件を満たす必要がある。
  また、延納によっても金銭納付を困難とする事由があるなどの一定要件を満たせば、物納の許可を受けることになる。
出所:国税庁「平成16年度相続税の物納申請状況等について」
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2005.08.08
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