>  今週のトピックス >  No.1083
30代を中心に広がる“心の病”
〜職場におけるメンタルヘルスの現状〜
●  深刻化する職場のメンタル不全
  企業従業員の心の病が深刻化し、職場がメンタル不全に陥っている。うつ病などの精神障害による労働災害認定は2004年度に過去最大の130人に達した。ちなみに認定者を年代別にみると、30歳代が53人と最も多く、また職種別では専門技術職が43人と最多だ。
  (財)社会経済生産性本部では、労働組合を対象にメンタルヘルスに関する調査を行い、このほどその結果を公表した。
  それによると、組合員の心の病の現状について、3年前と比べて増加傾向にあるとの回答をした組合は68.7%、横這いとする回答が16.4%だった。また、68.1%の労組が、心の病が原因で1月以上休業している組合員がいると回答している。前回の調査では63.5%であり、企業のメンタル不全はさらに深刻化しているようだ。
  年齢層別に見ると、心の病が深刻なのは30歳代とする回答が49.9%と最も多く、40歳代36.3%と合わせて全体の9割近くを占めている。職場における心の病が、年齢層の軸を30代へとシフトさせながら広がっている実態が透けて見える結果となった。
●  背景は人間関係、コミュニケーションの希薄化
  心の病の原因としては、(1)職場の人間関係30.4%、(2)仕事の問題18.6%、(3)職場環境の問題12.7%、(4)本人の問題7.2%――との回答だった。
  さらに、職場のメンタル不全を引き起こす背景となる要因としては、(1)コミュニケーションの希薄化49.9%、(2)仕事量の増加15.8%、(3)管理監督者の指導力不足12.3%、(4)労働時間の増加8.8%――と回答されており、労組対象であるためか、労働管理側に責任の所在があるとの認識が強い。
  しかし、こうした背景が組合員の心の病の引き金になっているのは間違いなく、職場内のコミュニケーションの不足が従業員を孤立させ、仕事量の多さと労働時間の長さがストレスを増加させている、という構造のようである。
●  予防段階での対策が最も重要
  こうした職場のメンタル不全を改善させるためのメンタルヘルス対策としては、(1)組合幹部向けの教育36.6%、(2)小冊子等によるPR33.3%、(3)メンタルヘルス講習会25.2%、(4)心の健康診断の実施20.1%――といった、メンタルヘルスや心の病に関する知識やそれへの対応の啓蒙が最も重視されている。
  それ以外の、(4)社外の相談機関への委嘱21.4%、(6)相談室の設置14.7%、(7)産業保健スタッフへの委嘱12.0%――など、心の病が発生した後の対応策は比較的少なく、啓蒙による予防策に重点がおかれていることがはっきりしている。
  メンタルヘルス対策には、予防段階(心の病の従業員が出ることを防ぐ職場環境の整備、啓蒙)、二次予防段階(不調者の早期発見)、不調者支援段階(職場復帰支援)の3つの段階があるが、この中で予防段階がもっとも重要であることは言うまでもない。
出所:財団法人社会経済生産性本部「労働組合のメンタルヘルスの取り組みに関するアンケート調査結果」
(可児 俊信、(株)ベネフィット・ワン コンサルティング室、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2005.08.15
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