>  今週のトピックス >  No.1088
税理士から見た郵政公社の問題点
〜(2)巨額な資金の行き着く先〜
●  “興味なし”だった世論も変わってきた?
  前回に続き、郵政公社の問題点について考えてみたい。
  まず最初に世論の声に耳を傾けてみよう。
  2004年10月の読売新聞の全国世論調査の結果によると、小泉内閣に優先的に取り組んでほしい課題(複数回答)は、次のようなものだった。
 1位 景気対策 69%
 2位 年金など社会保障制度改革 65%
 3位 雇用対策 35%
  あれ? 郵政民営化は? ――というと、わずか11%。郵政民営化を国民はあまり望んでいないのだろうか、それとも興味がないのだろうか…。
  しかし今回、衆院解散で世論の風向きも変わってきたようだ。小泉首相による劇的な解散劇の直後、マスコミ各社が緊急実施した世論調査では、内閣支持率が軒並みアップし、郵政民営化への首相の取組みに対する評価も上昇している。
  郵政公社という存在は、お金の流れを考えると、極めて深刻な問題をはらんでいると言わざるを得ないだけに、さらに世論の喚起を求めたいところだ。
●  郵貯と簡保のお金がなぜ問題なのか?
  さて、郵貯と簡保のお金は350兆円あると前回指摘した。
  では、このお金は一体どこにあるのか? つまり、郵貯や簡保で国民から預かったお金はどこに行くのか? これは以前までは、国の第2の予算といわれた「財政投融資制度(ざいせいとうゆうしせいど)」に充てられていた。その資金を社会資本整備に使い、日本は高度経済成長を迎えられたのである。
●  お金を流す仕組みにはメスが入った
  この制度は、以前まではきちんと機能していた。しかし現在では、社会資本整備自体が時代遅れとなり、さらに資金がこの財投制度から特殊法人に流れ、そして天下りの給料や退職金に使われていることが問題となり、この財投制度は2001年度に改革され、メスが入れられた。
  政府は郵貯などの資金を強制的に国に預けることにし、特殊法人などに貸し付ける仕組みは廃止した。今までは、我々が預けた郵便貯金のお金は、財投制度を通じて例えば、以前問題となった道路公団などに流れていたのである。そして、その道路公団などの特殊法人が軒並み赤字。しかし、そこの天下り官僚は結構な給料をもらっている。ということは、例えば現時点でも郵貯・簡保で預けているお金を一斉に国民が引き上げるというようなことをすれば、国は払えないであろう。
  現在の郵貯・簡保の残高は350兆円である。国家予算が80兆円ほどであるから、実にその4倍である。
●  出口の改革も進んでいる
  財投制度があることによって、郵貯と簡保だけで350兆円というお金を集金できた。
  そしてそのお金に目をつけたのが、特殊法人系の人たちである。
  特殊法人とは、例えば道路公団や住宅金融公庫。その特殊法人系の人たちは、会社は大赤字であるのに高い給料と退職金をもらって、足りなくなれば350兆円で補てんする。そして、それぞれの事業自体も、明らかに無駄が多かった。
  特殊法人の問題というのは、いわゆるお金の出口の問題ということになる。そしてこの特殊法人に対してもメスが入った。道路公団を民営化し、住宅金融公庫は廃止された。
  つまり、お金の出口の改革は一応進んでいるのである。
  では次なる課題は何か。
  それが入口の改革、つまり郵政民営化なのである。(つづく)
※財政投融資制度については、命をかけて戦った国会議員のHPをぜひ参照下さい。
→ http://www014.upp.so-net.ne.jp/ISHIIKOKI/
*石井紘基さんが亡くなられて約3年になります。ご冥福をお祈り申し上げます。
(今村 仁、今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2005.08.22
前のページにもどる
ページトップへ