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健康保険組合に未来はあるか?
〜今後の財政収支は再び厳しい状況へ〜
●  解散含め10年連続で減少
  健康保険組合連合会(注)はさる7月29日、平成16年度健保組合決算見込みの概要を発表した。平成17年3月末に存在した1,584組合の16年度決算見込み状況を集計したもので、比較対象となる15年度の数値は平成16年3月末に存在した1,622組合の確定データである。
  集計結果によると、平成17年3月末現在の組合数は1,584組合で、平成16年3月末の組合数(1,622組合)に比べて38組合減少している(うち27組合は解散)。組合数は平成7年度の1,819組合を境に、毎年減少を続けている。
●  平均標準賞与額1.5%増は“一筋の光明”
  一方、平均標準報酬月額は37万1,207円で、前年度比784円(0.2%)の微増となった。また、平均標準賞与額(年間)は116万4,195円となり、前年度比1万6,984円(1.5%)増加している。これを見て、「景気が回復しつつある」と断言できるかどうかは別にして、暗い話題が多い中では明るい材料の1つといえるだろう。
  保険料率(2月末)は74.84%(調整保険料率含、単純平均)で、前年度に比べ0.63ポイント低下した。介護保険料率が平均1.09%引上げられたことに伴い、保険料率を引下げた組合が多くなっていると思われる。
  政管健保の保険料率(82%)を超えている組合は388組合で、全体の24.5%。まだまだ厳しい財政状況の組合があることもうかがうことができる。
●  注目は「人材派遣健康保険組合」の成長性
  現在、非正規社員の雇用が進む中で注目されているのが人材派遣健康保険組合という健保組合である。
  この組合の保険料率は、健康保険料率58/1000(被保険者 29/1,000 事業主 29/1,000)、介護保険料率15/1000(被保険者7/1,000 事業主8/1,000)となっており政府管掌健康保険と比較すると大きな差がある。
  平成14年にできた比較的新しい組合であるが、約30万人の被保険者数で約300事業所が加入しているようだ。もちろん編入には派遣業を行っていることの他にも厳しい要件や審査があるが、可能性があるならチャレンジしてみるべきであろう。
●  3割超は経常赤字から脱せず
  平成16年度の健保組合経常収支は、経常収入5兆9,535億円、経常支出5兆6,474億円で差引3,061億円の黒字となり、5年ぶりに赤字決算を脱した15年度に引き続き2年連続の黒字決算となった。赤字組合は503組合(31.8%)に減少したが、依然3割を超える組合が赤字から脱却できないでいる。
  今後の見通しはあまり明るくなく、18年度以降は退職者給付拠出金の大幅な伸びにより、拠出金が増加することが見込まれ、さらに、平成19、20年度以降は法改正効果がなくなり、老人保健拠出金も増加に転じることから、財政収支は再び厳しい状況に陥ることが予測される。このような状況下で、各組合がどのように対応していくか期待したいところである。
(注) 健康保険組合連合会とは
1943年(昭和18年)4月29日に設立された公法人(本来,国がやるべき事業をかわりに行うことを目的とした組織・団体)。通称「健保連(けんぽれん)」と呼ばれ、全国の健康保険組合の連合組織として活動している。現在、全国の1,567(2005年7月1日現在)の健保組合で構成し、加入者数は約3,100万人、全国民の約4分の1をカバーしている。
出所:健康保険組合連合会「平成16年度健保組合決算見込みの概要」
(庄司 英尚、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2005.08.22
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