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税理士から見た郵政公社の問題点(最終回)
〜郵政民営化はなぜ必要か?〜
●  税理士の目から見た素朴な疑問
  郵政民営化の問題を考える短期集中連載も今回で最後。
  よくよく考えると、官業の無駄使いや天下り退職金の問題がなぜ起こるのかというと、そこに無駄ができるだけのお金があったからかもしれない。私もどちらかというと財布にお金があればすべて使ってしまうほうである。
  ではなぜ、税理士の私が郵政公社の問題にこんなにも目くじらを立てるのか。
  それは、ここ10年以上日本を覆っている「漫然とした将来への不安、閉塞感」をなんとか打破できないかと強く思うからである。単純に言うと、未来を生きる子供たちにとって魅力ある日本になってほしいという願いからである。
  そのためには、「がんばった人が報われる社会」を実現しないといけない。そういったことを考えると、大前提として「税金に対してのある程度の納得」が必要。将来、払った分ももらえないかもしれないと感じながら年金保険料を負担している人たちの声にならない声を、私は無視をしてはいけないと思う。それは私やあなたも同じ思いのはず。金額の大きさ、構造上の問題、たずさわる人の多さ、どれをとってみても「税金に対する納得」を我々が勝ち取るための根源の課題は、「郵政民営化」である。
●  郵政民営化は官の改革の突破口
  本題に戻ると、お金の入口である郵貯や簡保(350兆円)を民営化することによって、350兆円というお金が「官から民」へ流れる構造をとろうとしたのが、今回の「郵政民営化」の真意であった。
  官にお金を流す仕組みの「財政投融資制度」にメスが入り、お金の出口に当たる「特殊法人」も改革し、そしていよいよお金の入口に当たる部分を改革するために、「郵政民営化」を行おう、ということである。
  私は誰がなんと言おうと、郵政民営化は日本を変える「キモ」であると思う。小手先の「景気対策」や「年金対策」よりも、「郵政民営化」を優先するべきである。
  ここで、行革の鬼と言われ「増税なき財政再建」を掲げ、国鉄、電電公社、専売公社の3社民営化を断行した「土光敏夫(どこうとしお)さん」の言葉を引用したい。
  なぜ行革が必要か?という問いに対して、こう述べている。
  「ローマ帝国はパンとサーカスによって滅びた。これは、巨大な富を集中し繁栄を謳歌したローマ市民は、次第にその欲望を増大させ、タダのパンを与えられて労働を忘れ、サーカスに代表される消費と娯楽に明け暮れるようになる。その結果、ローマ市民は自立自助の勤労精神を失っていき・・・(中略)・・・滅んだ。わが国がそのような轍(てつ)を踏まないためには、自立自助という勤労精神を失わないようにしなくてはならん。それが私の哲学であり、行革をやらんとするスタンスだ。」
  自立自助という勤労精神、今こそ必要ではないかと思う。有名な言葉に、「天は自ら助くる者を助く」というのもある(サミュエル・スマイルズの「自助論」より)。そういった世の中にしていくためのキモが、「郵政民営化」である。
●  国民の信を問う選挙に!
  偶然にもアメリカ同時多発テロからちょうど4年目になる2005年9月11日、日本では第44回衆議院議員選挙(8月30日公示)の投票が行われる。財政・税制・金融制度改革、社会保障制度、少子高齢化・人口減少、産業構造改革、外交問題など、これからの日本が直面する課題は多い。しかしながら、衆院解散のきかっけとなった郵政民営化は、日本の構造改革の入り口であり、国民経済を左右する極めて大きな問題である。
  各党は選挙期間中に選挙公約やマニフェストを打ち出し、国民の判断を仰ぐこととなるが、あいまいな内容で国民を惑わすことだけは控えるべきだろう。これまで郵政民営化をめぐる4年間の議論を無駄にするばかりか、官の都合に合わせて国民に負担を強いる構図に何らの変化ももたらさないからだ。
  今回の選挙は、日本の将来を変えるための重要な節目であると認識すれば、郵政民営化を避けて通れないことは明白ではないか。
  問題を先送りにすることなく、まさに"国民の信を問う選挙"となることを期待したい。
(今村 仁、今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2005.08.29
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