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個人の政治献金は寄附金控除の対象になる
●  税額控除も選択できる政党などへの寄附金
  郵政民営化を争点にこれまでになく盛り上がりをみせる衆議院総選挙の投票がいよいよ9月11日に行われる。自民党と民主党の政権争いだけでなく、郵政民営化に反対した自民党議員と小泉首相が送り込んだ"刺客"との争いの行方など、今回の投票結果には見どころが満載である。
  ところで、選挙につきものの政治献金だが、個人が特定の団体や特定の公職にある候補者の選挙運動に関して行ったものは寄附金控除(所得控除)の対象となる。さらに、政党や政治資金団体に対する政治活動に関する寄附金で一定のものは、所得控除か税額控除の有利なほうを選択することができる。
  寄附金控除は、「その年に支出した特定寄附金の合計額」か「その年の総所得金額等の30%相当額」のいずれか低いほうの金額から1万円を差し引いた金額を所得金額から控除できる。一方、税額控除は、「その年中に支払った政党等に対する寄附金の合計額−1万円」に30%を乗じた金額(その年分の所得税額の25%相当額が限度)となる。
  例えば、1,000万円の給与所得者が200万円の政治献金をした場合、「200万円」か「1,000万円×30%=300万円」のいずれか低いほうであるから、200万円から1万円を差し引いた199万円が所得から控除できることになる。税額控除は「(200万円−1万円)×30%=59.7万円」だが、所得税額の25%相当額が限度となる。
  所得控除と税額控除のどちらが有利かは、実際に計算して比較してもらうしかないが、平均的な給与所得者であれば所得控除のほうが有利と思われる。
●  公認政党は政治献金の対象としても意味を持つ
  税額控除を選択できる支出相手の政治資金団体とは、政党のために資金援助する団体で、総務大臣に届け出しているものをいう。国会議員が主催したり主要な構成員になっている団体に対する寄附金は、所得控除は受けられるが、税額控除は選択できない。今回、「新党日本」が滑り込みで政党として公認となったが、それは比例代表での重複立候補や政見放送が可能になっただけでなく、政治献金の対象としても意味を持ってくるのだ。
  なお、これらの政治献金を行い寄附金控除を受ける場合は、寄附した相手から、総務大臣または選挙管理委員会の確認印のある「寄附金(税額)控除のための書類」をもらい、確定申告書に添付する必要がある。
●  法人の政治献金は一般の寄附金と同じ取扱い
  このように、個人が政治献金をした場合は税務上のメリットがあるわけだが、法人が支出する政治献金については、個人のような特定の取扱いはなく、あくまでも一般の寄附金として、所定の範囲内でしか損金算入は認められない。
  企業が個別に支出するのではなく、所属する業界団体などを通じて、臨時会費などの名目で支出するケースもあるが、この場合でも使途が政治献金であれば、一般の寄附金扱いとなり、一定範囲の損金算入限度額を超えた部分は課税対象となる。
  よくあるケースで、社長個人の政治献金を会社が肩代わりすることがある。この場合は、認定賞与として損金不算入となるだけでなく、社長個人としても源泉課税の対象となる。ただし、個人が行った政治献金については、上記のように、所得税法上、特定寄付金として所得控除あるいは税額控除の対象になる。
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2005.09.05
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