>  今週のトピックス >  No.1096
滞納住民税、遺族から3億円徴収
〜成果挙げる東京都の滞納税徴収対策〜
●  ホテルニュージャパン社長の“忘れ物”
  日本を震撼させたホテルニュージャパン(東京・赤坂)の火災事故が起こったのは、今から23年前の1982年であった。33名もの死者を出し、その怠慢なホテル経営に非難が集中した。当時、同ホテルの社長であった故・Y氏は、数々の違法運営を理由に業務上過失致死傷罪で有罪判決を受け、禁固3年の刑に服することになる。その後1998年11月に85歳で他界した。そんなY氏の遺産整理が、最近になってようやく遺族の手で完了した。
  ところで、1998年に亡くなった当時、Y氏は東京都民税や区民税など個人住民税約4億円を滞納したままであった。区から依頼を受けた東京都は、遺族の遺産整理を待って故人の住民税の回収に動き、徴収に成功したのである。具体的には、Y氏の遺族が所有していた東京都内のボウリング場などを差し押さえ、競売により約3億円の売却代金を住民税の滞納に充てたのである。
  住民税だけで約4億円の滞納ということは、国税である所得税はそれ以上ということになるのではないかと想像するが、そちらの徴収は東京都に水をあけられる結果となった。
●  Y氏は“初代ホリエモン”だった!?
  現在、マスコミでは相変わらず「ホリエモン」ことライブドア社長堀江貴文氏の話題で持ちきりだが、ある意味このY氏は、初代ホリエモン的な存在だったともいえる。
  ライブドア社長である堀江氏を一躍有名にしたのは、プロ野球参入やフジテレビ株買収などに代表される「企業のM&A」であったが、Y氏が最初に世間に名を馳せたのも、企業の合併・買収によるところなのである。1953年、Y氏は東京・日本橋の老舗百貨店「白木屋」(現・東急百貨店)や「帝国ホテル」などの株の買占めを行った。「白木屋」買収に関しては、最終的には東急グループの総帥、故・G氏の登場により一応丸く収まったが、当時のY氏は全財産を投げ打って大勝負をかけたようだ。まさにY氏は初代ホリエモンといえるのではないだろうか。
  そんな“初代ホリエモン”の滞納税徴収を、国税庁に先駆けて成功させた東京都。一体どんな作戦があったのだろうか。
●  「対策室」設置で徴収スキル向上
  東京都では2004年4月から35名のスタッフを擁する「個人都民税対策室」を設置し、差し押さえ可能な銀行口座の発見方法や複雑に入り組んだ抵当権への対処法など、徴収率向上のための専門的スキルを着実にアップさせてきた。
  さらに、税金滞納者から差し押さえた物品を検索サイト大手のヤフーと組むことによりインターネット公売を実施した。ちなみにこのネット公売には、3,000人弱が参加しアクセス者数が45万人に上ったようだ。
  今回の3億円徴収という“大江戸捕り物帖”の裏には、滞納税徴収に地道に取り組んできた東京都の努力があった。今回は、見事にそれが実を結んだのである。
(今村 仁、今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2005.09.05
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