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今後の賃金、「成果や業績は賞与に反映」が増加―経団連が春闘アンケート調査
●  5割を超す企業が「ベアは実施せず、定昇のみ実施」
  社団法人日本経済団体連合会は8月23日、「2005年春季労使交渉に関するトップ・マネジメントのアンケート調査結果」を発表した。
  このアンケート調査の歴史は古く、1969年から毎年行われている。各企業もこの調査結果に注目しており、今後の賃金対策および企業経営に活かしているといわれている。
  今回の調査結果によると、賃金の決定のあり方については、今年の賃金決定の結果(非管理職)は、「ベアは実施せず、定昇のみ実施」した企業が、昨年に続いて5割を超えている(53.5%)。また、「定昇一部縮減」は3.0%、「賃金額の据え置き」は3.9%、「恒久的な降給」を実施した企業は0.2%であった。
●  「定昇廃止・成果業績で賃金決定」は大幅減
  今後の望ましい賃金決定のあり方については、「定昇を廃止し、成果や業績による賃金決定とすべき」が45.3%(昨年56.9%)で、これに対し、「定昇のみとし、成果や業績は賞与に反映すべき」が36.0%(昨年30.4%)という結果になった。
  特に「定昇制度を廃止し、降給も含めた成果や業績による賃金決定とすべき」とする企業が大幅な減少となったことは特に注目すべき点である。これは、最近の時代の流れから定昇を廃止するということに躊躇している企業が増えてきているという、成果主義からの揺れ戻しの傾向を読み取ることができる。
  いずれにしても今後も賃金決定のあり方は、成果や業績は賞与に反映する傾向が強まっていくであろう。従来型の「定昇+ベア方式」というのがあたりまえだった時代を知っている方々にとっては厳しいことかもしれないが、時代にあわせた賃金決定のあり方に従わざるを得ないというのが現状であろう。
●  「賞与・一時金」を引き上げた企業は2年連続で増加
  今回労使交渉の結果としてとられた措置についてみると、「定期昇給制度の見直し(一部廃止も含む)」を実施した企業は20.1%で、昨年の33.0%と比較すると大幅に減少した。
  一方、「賞与・一時金」では、昨年より「引き上げた」企業は37.0%(昨年23.9%)、「引き下げた」企業は14.0%(同18.9%)で、引き上げた企業数が引き下げた企業数を2年連続して上回る結果となった。
  現在、各企業は改正高年齢者雇用安定法に対する措置や次世代育成支援対策に関する雇用環境の整備対応などに最も力をいれなければならない時期にさしかかっており、賃金制度の改革だけに時間を割くことは不可能である。とりわけ、改正高年齢者雇用安定法に対する措置では運用上の問題点も多数上がってくると予想され、各企業の担当者も頭を悩ませているに違いない。賃金と同じく再雇用や勤務延長の問題は、労働者にとって命がけの問題ともいえるだけに、労使の間で納得のいくものを時間をかけて構築することが必要ではないだろうか。
出所:日本経団連「2005年春季労使交渉に関するトップ・マネジメントのアンケート調査結果」
(庄司 英尚、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2005.09.05
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