>  今週のトピックス >  No.1106
可能なのか?「サラリーマン増税」なしの財政再建
●  自民党圧勝の裏にあるもの
  自民党が圧勝した。9月11日の総選挙において自民・公明両党で衆議院の3分の2以上を超える議席を獲得、まさに歴史的大勝利である。小泉内閣の郵政民営化をはじめとする構造改革路線が国民の信を得たことになる。圧倒的な支持を得たことで今後の構造改革に大きな弾みがつくことは間違いない。いままで暗闇にあった政官癒着の利権構造がさらに正され、税金のムダ遣いが徹底的に排除されることを国民のほとんどが期待している。
  さて、問題は財政再建である。少子高齢化が進むなかで財政再建を先送りすることが許されないのは衆目の一致するところ。そのために国民一人ひとりが負担増を受け入れる覚悟はあると思われる。自民党が圧勝したということは、“増税なき財政再建”といった民主党をはじめとする野党の主張が絵空ごとであることを、今回の選挙結果が証明したということでもある。あるいは、国民が負担増を容認したとも言えよう。
●  マニフェストで「サラリーマン増税」はしないと約束?
  ところが、この点に関しては肝心の自民党の考えがいまひとつわからないのである。
  今回の総選挙のマニフェスト(政権公約)では、自民党は「政府税調の『サラリーマン増税』の考えは採らない」との考えを明記してしまった。これには首を傾げざるを得ない。財政再建や社会保障制度改革のために国民一人ひとりの負担増が避けられないことは自明の理であるはず。納税者の大多数を占める4,000万人強のサラリーマンに負担増をお願いせずに、どこから増収を図るというのか。
  いくら選挙を有利に運ぼうとするためとはいえ、不正直な公約とはいえまいか。結果として大勝利となったが、マニフェストは絶対的に守るべきはずのもの。「サラリーマン増税」は国民一人ひとりに負担増をお願いすることの同工異曲である。浅はかな「サラリーマン増税」批判にうろたえた自民党の態度に、財政再建が本当に実現できるのか不安を覚える人も多いと思われる。
●  「サラリーマン増税」なしの財政再建は不可能
  もっとも、あの「サラリーマン増税」は今後の消費税率引上げの布石との見方をする人も少なくない。では、消費税率アップが増収策の大本命なのか。しかし、必要な税収を消費税だけで賄おうとするのは現実的ではない。
  一方、現行の個人所得課税に長年のゆがみ、不公平が蓄積されていることも事実である。これを正すことを大義名分に「サラリーマン増税」と批判されない範囲で見直し、その結果として税収増を図る道もある。もともと「サラリーマン増税」と批判すること自体がおかしいのである。何度も言うが、納税者のほとんどがサラリーマン(正確には給与所得者だが)なのだから、「サラリーマン増税」は国民一人ひとりが増税となることである。「サラリーマン狙い撃ち」といった批判が的を外れていることは言うまでもない。
  結局、「サラリーマン増税」なしには財政再建は不可能ということになろう。そこでまた障害となるのは総選挙のマニフェストである。この“自縄自縛”状態を、小泉内閣はどのように糊塗するのか、お手並み拝見といったところでもある。
  ところで、あまりの大勝利に小泉続投論の声が高まっているが、皆さんは忘れていないだろうか、「任期中は消費税を引き上げない」とした小泉公約を――。つまりは、小泉続投は消費税率を引き上げられないことを意味する。ここでも"自縄自縛"状態となっているが、つまるところ、小泉続投の可能性は極めて低いということであろう。
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2005.09.20
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