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住宅金融公庫「フラット35」の利用状況
●  従来の公庫融資より融資条件が緩和
  2003年10月から開始されたフラット35の利用状況が住宅金融公庫から報告された。
  フラット35は民間金融機関の住宅ローン債権を住宅金融公庫が買い取って証券化するもの。公庫は買い取った債権を担保に住宅ローン担保証券(MBS)を発行し、それを機関投資家に販売する。フラット35は、民間の融資を側面支援することに狙いがあり、民業圧迫の懸念が小さい分、従来の公庫融資より融資条件が緩められている。
  例えば、従来の融資上限は原則3,500万円だったが、フラット35は5,000万円に上がった。融資率(住宅価格に対する融資額の割合)の上限も一律8割に高まった。融資申し込みも年6回から、原則常時受け付けに変わって申し込みしやすくなった。貸出金利も公庫が住宅ローン証券の発行金利などをもとに下限を定め、各金融機関が独自に手数料を上乗せする方式となっている。
  2005年4月からさらに融資条件が緩和され、融資上限は5,000万円から8,000万円に。また融資期間も20年〜35年から15年〜35年に広げられたうえ、住宅の床面積の上限(280u)も撤廃された。
●  利用件数は直接融資を上回る
  今回の利用状況報告は2004年度の実績である。
  報告によれば、17,964件の融資実績(公庫からみれば債権買取実績)があった。借入目的別の内訳は新築共同住宅購入が6,500件、土地付建物新築資金が4,001件、建物だけの新築資金が3,700件、新築一戸建て購入が2,916件などとなっている。同時期の公庫の直接融資は14,447件であり、フラット35はすでに直接融資を上回っている。
  フラット35と直接融資の利用内容の違いは、まずフラット35は大都市部での利用件数が多いことである。これは大都市部の金融機関・ノンバンクが積極的にフラット35を取扱っているためと思われる。ちなみに東京都は3,381件、神奈川県2,246件、千葉県1,095件、埼玉県1,073件であり、関西圏では大阪府が1,478件、兵庫県が1,224件、そして愛知県が1,161件などとなっている。
  2番目の違いは、フラット35はノンバンクによる取り扱いが多いことである。全体の39.7%と約4割がノンバンクである。都市銀行が33.3%とそれに続き、地方銀行が13.6%などとなっている。
  3番目の違いは、フラット35の利用者は全体的に年齢層が若く、30歳代までの利用者が約7割を占めている。30歳代だけで61.6%にも達している。
●  借入額も直接融資を上回る
  フラット35の借入上限額が公庫の直接融資と比べて高いことから、物件の購入額・建築額が高い。フラット35による土地付建物の借入額は3,993万円と直接融資のマイホーム新築資金の3,565万円を400万円以上上回っている。建物新築資金もフラット35が2,982万円、直接融資が2,454万円と大きく差がある。
  同じ理由でフラット35だけで必要調達資金全額がまかないやすいことから、融資率も高くなっている(新築共同住宅購入資金で65.2%)。融資金額の多さは返済期間の長期化を促しており、実際に直接融資に比べて返済期間が長い。
  フラット35の利用者の平均像を想像すると、仕事が忙しく郊外に住めないので都心に新築マンションや戸建てを求める30歳代のサラリーマン像が浮かび上がる。
出所:住宅金融公庫「平成16年度フラット35利用者調査報告」
(可児 俊信、(株)ベネフィット・ワン コンサルティング室、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2005.09.26
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