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10月から介護保険施設の自己負担額が変更
〜利用者への説明は果たされているか?〜
●  自己負担増で利用者への説明会を開催
  先日、親族が入所している老人保健施設で、今年10月からスタートする「居住費と食費の自己負担、および介護費用の新たな自己負担額」についての説明会が催された。恐らく全国の介護保険施設で同様の説明会が開かれているはずだが、今回の負担増を利用者側にどう伝えるのか。利用者側の反応はどうなのか。この2点に興味があったので、急遽利用者側の一員として参加した次第である。
  配布されたプリントには、要介護別の介護費用自己負担額、新たに制定された各種加算、さらに部屋別の居住費(ショートの場合は滞在費)、食費などの金額が一覧で示されていた。どれも単価だけがバラバラに記され、しかも一日あたりの価格で表示されているため、ひと目ではどれくらいの負担増がのしかかってくるのかがピンと来ない。会場を埋め尽くした参加者のほとんどは60代、70代という高齢者で、案の定「よく分からない」という様子で首をひねるシーンが見受けられた。
●  筆者試算では1カ月で4万円の負担増に
  私はその場でひと月あたりの負担総額を計算してみた。低所得者の負担減の枠にかからないため、その負担増は1カ月ゆうに4万円を超える。介護保険の一割負担を含めると、トータルで月10万円強である。
  施設側は、「決して自分たちは儲かっていない。理解してほしい」という旨を繰り返し口にしていたが、本当に理解を求めるのであれば、せめて1カ月のトータル試算を示すくらいの丁寧さが求められるだろう。いくつかの施設を現場取材した限りでは、どこも似たような状況であるという。
●  通所サービスの食費負担には一切説明なし
  実は、今回最も関心を寄せていた点は、施設の居住費・食費もさることながら、通所サービスにおける食費負担についてである。今回の制度改正の矛盾の一つとして、施設サービスの居住費・食費には低所得者の負担減免措置が設けられている一方、通所サービスの食費負担については減免措置が何ら設けられていない点があげられている。
  通所サービスの食事については、一日あたり39単位の介護保険加算が付けられていたが、これが10月から廃止される。つまり、食材費+調理費のすべてが利用者の自己負担となるわけだ。食材費に加算される分を負担増とすると、単純に計算して1カ月あたり1万2,000円近くの負担増となる。
  低所得者に対する減免措置がないとすると、例えば基礎年金のみの世帯であっても同等の負担が課せられる。これは大変に厳しい数字と考えていいだろう。
  この説明をどうするのだろうかと注目していたが、私が参加した説明会では何ら触れられることはなかった。参加者からも質問は出ない。参加者が全て納得しているのなら構わないが、本当に理解が浸透しているのかは、会場の様子を見る限り大いに疑問が残った。
  10月の改正分に関しては、11月になって利用者のもとに請求書が届く。その金額を見て、利用者側はどう感じるのだろうか。自由契約という荒波が、いよいよ福祉の世界を包み込むことになる。
厚生労働省が示した居住費・食費の基準額によれば、老人保健施設で四人部屋を利用している人の場合、1カ月の負担増は約2万5,000円と想定されている。ただし、居住費・食費に関しては、施設側と利用者側の契約に基づいて設定されるため、想定金額と実額との間に大きな差が生じることも考えられる。
(田中 元、医療・福祉ジャーナリスト)
2005.09.26
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