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社宅の有効活用術
〜住宅手当と社宅、どちらがお得?〜
●  社宅で節税可能?
  今回は、住宅手当としてお金を支給されるより、住宅を会社が提供してくれた場合のほうが節税となる事例を紹介する。
A君の場合
給与所得(額面)30万円、妻1人・子1人
<ケース1:住宅手当5万円が支給される場合>
  まず住宅手当5万円が支給される場合で考えてみよう。
  A君の手取りは、社会保険料・所得税控除後で29万9,656円。さらにここから家賃10万円を払っているとすると、自由に使えるお金は19万9,656円になる。
<ケース2:住宅を会社が提供してくれた場合>
  では、社宅の場合はどうか。
  まず会社が不動産屋さんから社宅を借りあげ、それを従業員のA君に貸したとする。A君の側からみると、住宅手当5万円がなくなって控除項目として住宅負担5万円が天引きされることになる。しかし、今まで払っていた家賃10万円がなくなる。
  これを実質手取り面から見ると、額面30万円住宅負担控除5万円でこの手取りは、20万8,620円。家賃は会社が負担してくれているので、これが自由に使えるお金となる。
  自由に使えるお金が先ほどの19万9,656円から、20万8,620円へと、8,964円増えた。
  1年間に直すと10万7,568円になる。住んでいる場所は同じなのに、社宅扱いとするだけでこんなに得するのである。従業員からすると、実質的に手取りが増えることになる。
●  “得”をするカラクリ
  でもなんか不思議な感じがするのではないだろうか。「なぜ得をするのか?」、読者の皆さんはそう思われたことでしょう。実はこれにはきちんとしたカラクリがある。
  <ケース1>では、額面と住宅手当を合計すると35万円になる。つまり35万円に対して社会保険料・所得税がかかっていたのである。35万円に対する社会保険料は3万9,204円(会社もほぼ同額負担)。またそれに対する所得税は、1万1,140円。合計すると、5万344円となる。
  それに対して<ケース2>では、額面30万円に対して社会保険料・所得税はそれぞれ3万2,670円、8,710円。合計4万1,380円となる。
  まさにこの差(50,344円―41,380円=8,964円)が得をする部分なのである。
  この中の社会保険料部分はほぼ同等の金額を会社も負担している。だから、この社宅扱いの方法をとると、会社も社会保険料負担部分については得をすることになる。従業員の手取りが増えることと合わせると一石二鳥といえる。
  しかし、かといって社宅を何がなんでも奨励するつもりはもちろんない。経営はバランスが大事であると思うので、社宅の活用は参考程度に留めておいてほしい。
●  所得税の非課税規定
  実は、社宅の有効活用以外にも実質的に従業員の給与を増やすような節税対策がある。先ほどみたように、所得税の節税につながればその分手取り額が増えるので、会社が支払う給与のうち所得税の非課税規定がうまく使えるものをピックアップすればよい。そういった観点から見れば、例えば出張手当・通勤手当・食事手当なども節税対策に使えるのである。
(今村 仁、今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2005.10.03
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