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利用進まぬ「電子申告・納税システム」
●  電子申告・納税システムの利用件数は国税13万、地方税366件
  国税の電子申告・納税システム(e−Tax)の利用件数は今年8月31日現在で約13万件、地方税の電子申告システム(eLTAX)にいたっては今年5月末現在の数字ながらわずか366件。インターネットの急速な普及を背景に、会社や自宅にいながら申告や各種申請ができるという利便性を売り物に導入されたが、当局の思惑通りには利用件数が伸びていない。法人数が約255万社(国税庁「法人企業の実態調査」)もあるなかでのこの件数はさみしいものがある。
●  e−Taxの約6割は申告での利用
  国税庁のまとめによると、e−Taxの利用件数は、2004年2月の運用開始以降、今年8月31日現在で13万4,353件となっている。内訳は、「所得税申告」が2万1,290件、「法人税申告」が3万1,953件など申告での利用が計8万3,913件、そのほか「法定調書」2万1,858件、「納税」1万4,613件、「源泉所得税(徴収高計算書)」9,949件、「申請・届出等」4,020件となっている。申告での利用が全体の62.5%と約6割を占めている。
  4月以降の2005年度に入ってからは、申告利用では「法人税」が1万4,001件、「消費税(法人税)」が1万3,409件など計2万8,018件、そのほかの利用では、「源泉所得税」5,551件、「納税」7,897件など計1万5,700件、総計4万3,718件増えたに過ぎない。ちなみに、e−Taxを利用するための開始届出書の提出件数は、9月8日現在で累計9万7,591件となっている。
●  全国で導入が進む「eLTAX」も低調
  一方、今年2月から大阪府や岐阜県など6府県で先行運用された地方税の電子申告システム(eLTAX)による法人事業税・法人都道府県民税の電子申告は、国税のe−Taxに輪をかけて低調だ。6府県の利用実績は、3月決算法人の申告が終了した5月末現在で、利用届出件数が988件、うち実際に申告を行ったのは366件と極めて低い数字だ。
  eLTAXの特徴としては、(1)電子申告に関する利用届出・申告の手続きがインターネット上で行える、(2)複数の地方団体に対するそれぞれへの申告を1回のデータ送信操作で行える、(3)送信前にデータチェック機能を用いて、記載内容を点検できる、(4)eLTAXに対応した市販の税務・会計ソフトで作成した申告データもそのまま利用できる――などが挙げられている。
  今年8月に入って、1日からの埼玉県を皮切りに、17日から東京都、神奈川県など5都県がスタートしており、10月3日には三重県で、さらに来年1月からはそのほかの道府県と政令指定都市において順次導入される予定だ。
●  普及にはインセンティブが必要との声も
  インターネットを活用することで、わざわざ役所に足を運ばずに申告・納税を済ますことができるメリットは大きいものがあるが、例えば国税では、「開始までの手続きが面倒」「添付書類は郵便などで別送しなければならないため二度手間」「利用時間が平日の午前9時から午後9時までに限られている」などの不満が聞かれる。
  電子申告・納税を普及させるためには、ある程度の不備・不満があっても、利用のメリットがある、例えば「電子申告控除(例えば5万円控除)」など何らかのインセンティブが必要との声もある。
  日本税理士会連合会でも、e−Taxの利用促進に向けて、インセンティブ措置を設けることのほか、法第33条の2に規定する書面が添付されている場合に別途郵送が必要となる添付書面の省略を認めることにつき、実務者による協議の継続とともに特段の配慮を求めている。
  また、総務省はこのほど、電子政府の促進に向け、オンライン利用の企業ニーズが高い手続きなどを「オンライン利用促進対象手続き」と定め、手続きごとに今年度末までに行動計画(アクションプラン)の策定を義務付けた。このなかには国税のe−Taxも含まれる。こうした努力がどこまで功を奏するかは判断しにくいが、少なくとも急速に利用件数が伸びるとは思えず、普及に向けた試行錯誤がまだまだ続きそうな状況である。
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2005.10.03
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