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投資信託販売開始は日本郵政公社の新たなる一歩となるか?
●  郵政民営化と投資信託販売を考える
  日本郵政公社(以下、郵便局)は10月3日から投資信託販売を開始し、初日の販売額は約11億円と好調な滑り出しを切った。郵政民営化が争点となった先般の衆議院総選挙において、小泉自民党が大勝したことから郵政民営化はほぼ間違いないであろう。その民営化の流れの中、郵便局は民間銀行同様に手数料ビジネスの確立が急務となっており、その具体的な手段として投信販売が開始された訳である。そこで今回は、郵政民営化と投資信託販売について考えたい。
1.各事業で着々と準備進める郵便局
  実は、郵便局は今年初めから着々と民営化後の収益源確保の手段を講じている。例えば、郵便事業では、「有名コンビニ店」でのゆうパックの取扱いを開始しており、運輸各社と熾烈な競争を行っている。最近は、コンビニ以外にも法人取引を進めており、デパートの配送などにおいてもゆうパックの取扱いが拡大している。今後は国際郵便事業へも拡大する戦略を示しており、郵便事業における民営化の準備はかなり進んでいるといえよう。
  また、保険事業においては、定期付き終身保険(ながいきくん)をすでに発売して、養老保険などからの振替えを行っており、その件数も急速に件数拡大している。民間生保の主力である定期付き終身保険が数年後には簡保の主力になる可能性は高く、簡保民営化後に保険金額の現在の上限額1,000万円が撤廃されれば、民間生保にとって、大きな脅威となることは間違いない。その点から考えれば、簡易保険事業においても民営化の準備が進みつつあるといえる。
  そして、今回は、民営化後の貯金事業の収益事業の柱として、手数料ビジネス(フィービジネス)商品である投資信託の販売を開始した。投資信託販売は、8月末には銀行の窓販シェアが50%を突破しており、今や民間銀行のリテール事業における収益の柱の1つへと成長している。郵便局もその将来性に期待していることは間違いないであろう。その証拠に、郵便局の2009年度の投信販売残高は、メガバンク並みの1兆5,300億円を目標としている。高齢者などから絶対的な信頼を得ている郵便局がリスク性の金融商品である投資信託の販売を開始することは、従来の郵便局のビジネススタイルへの決別であると同時に、貯金事業の手数料拡大に対する郵便局の並々ならぬ決意を感じる。つまり、今回の投信販売開始は、貯金事業の民営化後のための準備といえる。
2.郵便局の投資信託販売は日本型金融ビジネスモデルの転換
  今回の郵便局の投資信託販売は、単なる一金融機関の販売開始とは影響が異なる点に注意する必要がある。戦後は、日本人の感覚に「貯蓄は美徳であり、投資はバクチのようなもの」という、かなり貯蓄に傾斜したイメージが植え付けられた。この背景には、国民が金融機関に預けた預貯金を、金融機関が運用(融資、有価証券投資、不動産投資など)するというビジネスモデルを維持するためのものであり、いわば国策でもあった。しかし、すでに民間の金融機関はリテール業務の収益源として手数料ビジネスへ大きく舵を切っており、戦後のビジネスモデルの転換を図りつつある。
  一方、郵便局においても、郵便貯金という商品を通じ個人の資金を吸収することで、郵政公社の国債購入資金となったり、財政投融資の資金源となっていた。その意味で、これも国策といえるが、昨今の情勢より、郵政公社のビジネスモデルも限界を迎えていた。そのため、郵便局も従来のビジネスモデルを転換し、民間金融機関とベクトルを一にした、つまり、手数料ビジネスへ舵を切ったことを意味する。
  この郵便局のビジネスモデル転換で、現在、政府が推し進めている「貯蓄から投資へ」という流れを一層加速させることは間違いないであろう。その意味で、もっともリテール営業を知り尽くした郵便局の局員がリスク性の商品である投資信託を販売する意義は非常に大きいといえる。
3.取扱い郵便局について
  当初、投資信託を取扱う郵便局は、全国で575局(全国の郵便局自体の数は2万4,700局)であり、最終的には1,550局まで拡大される予定である(興味ある方は下記「日本郵政公社ホームページ」へアクセスしてみてほしい)。
  以上のように、今回の投資信託販売への参入は、今後の日本郵政公社にとって大きな意味を持っていることはいうまでもないが、われわれ個人にとっても、資産運用に対する考え方、運用スタイルを一変させる可能性も十分ある。その点から考えれば、日本郵政公社の投資信託販売の動向からは当分、目が離せないとえる。   今回は割愛したが、日本郵政公社が取り扱う具体的な投資信託の種類についても、次の機会に取り上げたい。
参考:日本郵政公社ホームページ「投資信託取扱郵便局」
2005.10.11
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