>  今週のトピックス >  No.1122
自己負担であれば利害関係者と飲食できる税務職員
●  国家公務員倫理規程に官民とも過剰反応
  2000年に国家公務員倫理規程が施行されて5年が経過した。この倫理規程は、旧大蔵省の不祥事に端を発したもので、国家公務員と利害関係者の付き合いを厳しく制限している。利害関係者とは、典型的な例でいえば税務調査を受ける納税者や税の追徴処分が行われた場合の相手方である。税務職員が利害関係者に費用を負担させて、飲食やゴルフなどのもてなしを受けることを禁じたのである。
  当然といえば当然のことだが、問題なのは官民双方が過剰に反応し、利害関係者でなくても痛くない腹を探られないために自主規制してしまい、社会通念上の一般的な付き合いもままならない堅苦しさが生じてしまった面である。例えば、税理士は顧問先の代理人となることから税務調査などで利害関係が生じるおそれがあるため、特に国税局出身の税理士などは税務職員との接触に必要以上に気をつかっている様子がうかがえる。
●  飲食費用が1万円を超える場合は事前届出
  また、法人会や青色申告会など管轄地域の税務行政に協力してくれる関係団体との夜の会合も自粛することが多く、倫理規程は厳しすぎるとの声が四方八方から起こっていた。このような状況下、国家公務員倫理規程の取り扱いが今年4月から一部変更になった。変更内容の一つは、自分の飲食費用を国家公務員が自ら負担する場合や、利害関係者ではない第三者が負担する場合には、利害関係者とともに飲食することができるようになったことである。
  ただし、国家公務員の飲食に要する費用が1万円を超える場合は倫理監督官へ事前に届けることが必要である。やむを得ない事情によって、事前に届出ができなかった場合は、事後速やかに届出を行わなければならない。なお、多数の人が出席する立食パーティーなどにおいて利害関係者とともに飲食する場合などは、自分の飲食に要する費用が1万円を超えても届出の必要はない。
  また、利害関係者ではない第三者が費用を負担する場合であっても、酒食のもてなしを繰り返し受けるなど、社会通念上相当と認められる程度を超える供応接待を受けることは認められない。
  今回の倫理規程取扱いの変更は、意見交換や情報収集に資するために規制を分かりやすくする趣旨で改正されたものという。
●  期待できるか、萎縮した官民双方の関係改善
  今後は、倫理規程の過剰な解釈で萎縮してしまった官民双方の関係が少しでも改善されることを期待したい。税務職員はどうしても国民の疑惑や不信を招かないような行動を求められることから、自主規制しがちである。関係改善のカギは税務職員の判断にかかっているともいえる。利害関係者も含め、倫理規程にのっとって堂々とお付き合い願いたいものだ。もっとも、相手が倫理規程上の利害関係者でなくても、税理士や管内納税者との関係においては「割り勘による付き合い」が原則であることはいうまでもないが…。
出所:国家公務員倫理規定「できること」「できないこと」
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2005.10.17
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