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従業員の副業に対する企業姿勢は規制強化の一途
●  副業を禁止する企業が大幅増加
  従業員の副業に対する企業の姿勢を調査した報告書(労働政策研究・研修機構「雇用者の副業に関する調査研究」)がまとまった。副業を行う従業員は、(1)賃金の伸びが抑えられて収入を補てんする必要がある、(2)リストラに備えて収入を得る道を確保しておく、(3)勤務先に対する帰属意識の低下、(4)夜間のビジネスやネットビジネスなど時間・場所を問わない仕事が増えた――などの理由により、潜在的には増えていると考えられる。
  一方、従業員の副業に対する企業の姿勢は年々厳しくなっている。副業を禁止している企業は、1995年の調査では38.6%だったが、今回(2004年)は50.4%となっている。また、「禁止ではないが許可が必要」は28.5%、「届出が必要」は4.5%、「禁止していない」は16.0%に留まる。なお、副業の禁止や許可・届出等の規制は、78.0%の企業が就業規則で定めており、10.8%が社内慣行によっている。
●  副業を前向きにとらえる企業はわずか
  企業が副業を規制する理由は、「業務に専念して欲しい」とするのが78.1%、「業務に悪影響を及ぼす」が49.3%、「企業秩序を乱す」が40.9%、「業務上の秘密保持」が27.8%となっている(複数回答)。1995年の調査では択一式の回答で「業務に専念して欲しい」が77.8%と圧倒的だったことから、社業以外にエネルギーを割いて欲しくないというのが最大の本音だろう。
  実際、90.5%の企業が、副業のデメリットとして「疲労による業務効率低下」を挙げている。それ以外では、「組織規律の乱れ」58.3%、「残業・休日出勤ができない」49.7%、「社内情報の漏洩」34.9%が続いている。ちなみに副業のメリットについては、「社員の視野・能力が拡大する」と前向きにとらえる企業は8.6%とわずかであり、78.5%が「メリットなし」と回答している。
●  副業は規制するものの、実態把握はせず
  副業規制に違反した場合は、「解雇」が43.7%と最多、次に「譴責(けんせき)」が33.5%、「減給」が20.4%、「出勤停止や停職」が19.3%、「戒告」が16.6%、「降格・降職」が15.1%などとなっている。
  このように副業を規制する一方で、従業員の副業の実態を「特に把握していない」企業が84.0%と大半を占め、「副業の有無を把握している」のは12.6%に過ぎない。禁止はしているものの、積極的に副業の有無を調べてはいない企業の実態もうかがえる。
  その理由の一つに、今後、副業を行う従業員が「増える」とする回答は8.1%に過ぎず、「増えない」と楽観視している企業が、89.9%と圧倒的に多いことがある。
出所:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「雇用者の副業に関する調査研究」
(可児 俊信、(株)ベネフィット・ワン コンサルティング室、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2005.10.24
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