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大手銀行の中間期利益が過去最大に
●  連結最終利益1兆3,000億円
  大手銀行6グループ(三菱UFJ、みずほ、三井住友、りそな、住友信託、三井トラストフィナンシャルグループ)の2005年9月中間期の連結最終利益が、合計で1兆3,000億円と過去最大となることが分かった。
  利益が拡大した最大の原因は、不良債権処理負担の減少にともなう貸倒引当金の戻入益の計上だ。この戻入益の計上額が大手銀行全体で4,000億円を超えたため、全体の利益水準を底上げした格好だ。
  この中でも最終利益が最大だったのは、旧UFJ銀行の3,350億円である。当初の予想では1,400億円だったが、大口貸出先の業績改善にともなう引当金戻入益が大きく影響したようだ。ちなみに旧UFJ銀行を含む三菱UFJフィナンシャルグループ全体で見ると、9月中間期の利益合計が5,600億円にのぼり、これはトヨタ自動車の5,500億円を超え、国内最大の利益ということになる。
  銀行の本業の利益を示す業務純益が伸びていることに加え、規制緩和にともない窓口で行っている保険商品販売などの手数料収入が増えていることも好結果に結びついている。
●  国内銀行が抱える課題
  しかし、国内銀行については海外の金融機関と比べるとまだまだ収益力が乏しいことや、貸し出し業務以外での強みが少ないことも、今後の課題だ。例えば、M&Aなどにともなう各種の企業金融サポート業務などである。こういった企業ニーズが表面化していない分野へもチャレンジをしていかないと、国内金融機関が海外勢に飲み込まれる恐れは、これだけの利益を出していてもなお、和らぐことはないだろう。
  また、公的資金を返済していない銀行の存在や、銀行のバランスシートにある資産性の問題もある。
  バランスシート上の資産性の問題とは、つまり「繰り延べ税金資産」のことだ。日本経済新聞2005年10月19日朝刊によると、中核的自己資本に占める繰り延べ税金資産の比率は、旧三菱東京9.99%、旧UFJ47.27%、みずほ24.04%、三井住友47.60%、りそな3.18%、住友信託9.31%、三井トラスト35.12%となっている。
●  繰り延べ税金資産とは
  繰り延べ税金資産とは、税法で認められた限度額を超えて不良債権などを処理(会計上は費用としていったん計上するが、税金計算上はその費用を否認)した場合、納めすぎた税金がいずれ返ってくると想定して、その還付分を資産に計上することである。これは1999年にはじまった税効果会計により導入されたものだ。
  銀行経営における重要指標である自己資本比率の計算にあたっても、貸し倒れの最終処理後に還付されるこの税金相当額である繰り延べ税金資産を、一定の条件付きで自己資本に算入できることになっている。
  今後国内銀行には、過去最大となる利益を原資に繰り延べ税金資産の問題や公的資金の返済、ひいては預金者への過度な低金利政策などの改善を期待したい。
(今村 仁、今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2005.10.24
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